障害児の可能性広げたい NPO代表ブラウンさん

「もっと子どもたちの可能性を広げたい」と、障害児に対するスポーツ療育支援に取り組むNPO法人「Root’s(ルーツ)和歌山」(ブラウン恵津子代表)。昨年設立し、和歌山市の新南小学校(木広町)と加太小学校(加太)で週に1回開いている運動教室は、子どもも親も伸び伸びと学べる場として親しまれている。

教室では、発達障害やダウン症など一人ひとりの個性に合わせ、専門スタッフが指導。筋力を鍛え、強い体づくりに取り組んでいる。

ボールを投げ、ハードルを跳び、マットで前回りをして、「できた!」と楽しそうに声を響かせる子どもたち。すぐにはできない運動でも、何度も繰り返し教えることで、できるようになる。

ブラウンさん(51)は「障害に関係なく、その子の良いところ、苦手なところを理解した上で、本人と向き合い、良い部分を伸ばしていきたい」と話す。

活動を始めたきっかけはブラウンさん自身の体験にある。

ブラウンさんにはダウン症の長女ジェシカさん(9)がいる。周りの目が気になってしまい、外に連れて行くのが怖かったこと、習い事をさせたくても受け入れてくれるところがないという経験をした。

「障害のある子の親は、子どもが習い事を始めたくても他の子に迷惑をかけるのではないか、と気後れしてしまう。親も子も自由に伸び伸び遊び、学べる場がほしかった」と、NPOを立ち上げた。

教室に通う子どもたちは、楽しく運動するだけでなく、感情のコントロールができるようになりたい、言葉で要求や気持ちを伝えられるようになりたい、ルールを理解して集団行動ができるようになりたいなど、それぞれが目標を持っている。

自閉症の息子2人と参加している和歌山市の空山愛美さん(39)は「ここでは私も子どもも、自由に伸び伸び楽しむことができる」、ダウン症の息子を見守る則村麗奈さん(44)は「『腹減った』って言ってこないから、本人も楽しんでいるんでしょうね」とほほ笑む。

ブラウンさんは42歳でジェシカさんを出産し、ダウン症だと分かった時、「目の前が真っ暗になった」。家に閉じこもり、泣いてばかり。先のことを考えると気分が沈み、暗い気持ちで毎日を過ごしたという。

ジェシカさんが小学生となり、保護者や同級生に理解してもらうため、ブラウンさんは障害について説明することになった。「泣きながらだったけど、初めて人前で口に出したことで、自信がついた。娘のことを普通に話せるようになった」と振り返る。

今は同じ思いや悩みを抱える母親の話を聞き、アドバイスをすることもある。ブラウンさんは「子ども本人は何とも思っていないのに、親が気にしているだけ。問題は親の気持ち」と言う。

教室では、子どもたちが運動している間、親たちはゆっくり話して過ごすことができる。「一人で抱えていた問題をここで話し、前向きになってほしい。先を考えても答えは出ないから、親も子も今を楽しく笑って過ごしてほしい」とブラウンさんは願っている。

問い合わせは同団体(℡090・5124・5891)。

 

ブラウンさん㊧とジェシカさん

 

楽しく運動する児童ら

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