WAKAYAMA NEWS HARBOR
和歌山さんぽみちプロジェクト

糖度が高く、希少な「藤稔」

前号では、欧米系の品種が融合して生まれた、人気品種である「シャインマスカット」を取り上げた。今週は「ピオーネ」を親とし、大粒の果実が特徴の「藤稔(ふじみのり)」を紹介したい。
藤稔は神奈川県藤沢市で、ピオーネ(「巨峰」と「カノンホール・マスカット」の掛け合わせ)と「井川682号」を交雑させ、選抜育成したぶどうで、1985年に品種登録された。
果実の直径は500円玉ほどで、大きいものでは1粒の重さが30㌘以上になる。食してみると、糖度は17度程度と高めだが、甘味と酸味のバランスが良く、果汁が豊富。みずみずしい食感で、やわらかめの肉質である。栽培方法によって、種無しと種ありのものがあり、購入する際には注意したい。
また、果実が大きいが故に、房から実落ちすることがあるため、長距離の輸送に向かず、包装を外し持ち上げるとバラバラと実が落ちてしまい、驚かされることもある。
農水省統計(2020年)によると、主な生産地は、第1位が山梨県(62・1㌶)、第2位が兵庫県(22・4㌶)、第3位が神奈川県(18・3㌶)で、全国的に見ても栽培面積は広くない。山梨県内では「大峰(たいほう)」の名で販売。海外への進出が行われており、中国で栽培されている。和歌山県内での栽培面積は第20位で2・5㌶となっており、わずかではあるが栽培されている。
収穫時期は8月上旬から9月下旬まで。一つの農園あたり、およそ2週間から3週間程度の期間で収穫が終わるので、食べられる期間が短く希少価値もある。
ことしのシーズンは終わってしまったが、1粒が巨峰の倍以上にもなる珍しい品種。ぜひ、口いっぱいに広がる甘味と豊富な果汁を味わってほしい。
(次田尚弘/和歌山市)