万葉集の花500枚描く 中尾安希さん淡彩画で

紀の川や和歌の浦など、ふるさとの風景を描き続けてきた和歌山市三葛の洋画家・中尾安希さん(82)。3年半前から描き始めた「万葉集」の歌に登場する花や植物をモチーフにした淡彩画が500枚に達した。

作品は絵はがきサイズ。コロナ禍で自宅にいることが多くなった2020年4月から描き始めた。スタートは水彩絵の具、300枚以降は色鉛筆を使っている。1枚に要する時間は約30分。週に3枚ほど描いてきた。

「花萬葉楽描帖(はなまんようらくがきちょう)」と名付けたファイルには万葉集の定番のハギ、桜、カキツバタなど季節の草花を描いた作品が500枚がずらりと並んでいる。

中尾さんは「4500首余りある万葉集の足元に少し近づいたかな。小さい山に登れた感じがする」とにっこり。

 

ラストは梅の花

記念すべき500枚目に選んだのは、大伴旅人が詠んだ「我が園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも」に登場する梅。万葉集の中には梅に関する和歌が110首ほど詠まれている。「たくさん描いてきた思い入れのある花で終わりたかった」と寒い中で凜と咲く白梅と紅梅で締めくくった。

作品は万葉歌を添えて、自身のフェイスブックで紹介している。

 

夫婦でスケッチ旅行

中尾さんが絵を描くようになったきっかけは、小学校4年生の頃に、担任教諭から絵を褒められたこと。星林高校では美術部に所属し当時の顧問、故木下克己教諭のアトリエに通い、4年ほど学んだ。住友金属和歌山製鉄所(現・日本製鉄関西製鉄所和歌山地区)に就職してからも趣味として続けていたが、本格的に絵を描くようになったのは59歳で退職してから。県内を巡るだけでなく、船で日本一周したり、ギリシャやスペインなど海外にも夫婦でスケッチ旅行に出掛けたりして、制作してきた。

 

次は灯台200枚

500枚描き終え、今後の目標は「日本や海外の灯台を200枚描くこと」だという。「灯台は周りを明るくする。自分の絵で世の中が明るくなるよう照らしたい。できたらまたスケッチ旅行にも行きたいね」と話している。

作品は中尾さんの自宅兼アトリエ「あきの美術館」で見ることができる。入場無料。午前10時から午後5時まで。月・火曜日休館。来館には事前連絡が必要。問い合わせは中尾さん(℡073・445・2756)。

 

500枚を描き終え、次の創作に取り組む中尾さん

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