WAKAYAMA NEWS HARBOR
和歌山さんぽみちプロジェクト

東北生まれの「あづましづく」

前号では、糖度が20度に達するほどの甘味で、巨峰の枝変わり品種である「紫玉(しぎょく)」を取り上げた。今週は、巨峰の栽培に課題がある地域で生み出された「あづましづく」を紹介したい。
あづましづくは、2004年に品種登録された比較的新しいぶどう。「ブラックオリンピア」と「4倍体ヒムロッド」を交配し、大粒で極早生の種なしぶどうを選抜し育成したもの。新品種育成の経緯には、主な栽培地である福島県の課題があった。
福島県ではデラウェアやキャンベルなどの小粒のぶどうの栽培が行われていたが、次第に巨峰のような大粒のぶどうが消費者に好まれるようになり、巨峰の栽培へのシフトを余儀なくされた。巨峰の産地は福島県よりも温暖な西の地域が中心で、成熟期や収穫量において劣る傾向にあった。巨峰を品種改良した「高尾」という品種も生み出されていたが、病害虫が原因で栽培が難航。あづましづくに注目が集まった。
あづましづくの特徴は成熟の早さ。8月上旬ごろには収穫が可能で、市場価格が良いお盆の時期に出荷が可能。巨峰よりも20日から1カ月程度早いことから、市場優位性が高い品種となっている。
果実の重さは15㌘程度で、糖度は17度程度。肉質は巨峰よりやわらかい傾向にあり、皮はむきやすい。果汁が多く濃厚でジューシーな食味となっている。
農水省統計(2020年)によると、国内の栽培面積は約14㌶。第1位が福島県(12・5㌶)と9割を占め、第2位が青森県(1・4㌶)となっている。東北地方での栽培が主であるが、筆者は和歌山県内の産直市場で購入した。収穫期の早さに着目されてなのか、福島県以西の地域でもわずかながら栽培が行われているようだ。
手にする機会があれば、ぜひ食べてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)