各界での尽力たたえ 秋の褒章に県内7人

2023年秋の褒章受章者が3日に発令される。和歌山県関係の受章者は65~82歳の7人(男性6人、女性1人)。内訳は、各分野の業務に精励して模範となる人に贈られる黄綬が2人、公衆の利益や公共の事務に尽力した人に贈られる藍綬が5人。今月中旬に各省庁での伝達と拝謁があり、総務省関係の受章者は県庁で伝達を行う。

今回を含めた県内の受章者総数は、男性1003人、女性134人、3団体の計1140(黄綬508、藍綬621、緑綬5、紫綬6)となる。

晴れの受章者は次の皆さん。

【黄綬】中西重裕(65)㈱一級建築士事務所K&Nアーキテクツ代表取締役、和歌山市梅原▽坂東利仁(80)元バンドー設備工業㈱社長、和歌山市湊本町

【藍綬】青石儒幸(74)保護司、有田川町楠本▽池永榮治(82)広川町選挙管理委員会委員、同町南金屋▽白水博(72)自然公園指導員、太地町太地▽東定司(71)自然公園指導員、那智勝浦町下里▽渡辺友子(75)保護司、和歌山市狐島

 



 
黄綬 ㈱一級建築士事務所K&Nアーキテクツ代表取締役
中西重裕さん(65)
― 和歌山市梅原 ―

 

地域に愛される建築を

一級建築士として事務所を設立して34年、「正直に、まっすぐに」をモットーに地域住民に親しまれる建築物の設計に取り組んできた。幼い頃から建物に興味を持ち、1970年の大阪万博ではさまざまな形のパビリオンを見て、デザイン力の高さに感動。7回も訪れたという。

11歳で父が営む電気工事の会社が、田中町から吹屋町に移転する際、見よう見まねで設計図を書いた。父はその図面を採用し、今もその建物は使われている。

城東中学校、向陽高校を卒業し、長崎総合科学大学で建築を学んだ。東京の建築事務所で勤めた後、30歳を過ぎた89年、和歌山に戻り設計事務所を構えた。

建物の調査・保存にも取り組み、「古いものでも丁寧に改修し快適に暮らせるよう作り変えられることを、世の中に示していきたい」と日本の伝統的素材や工法にこだわり設計する。

まち歩きをライフワークとし、本紙で、県内に残る歴史的な建物に関する連載を11年間担当した。

2001年には同市和歌浦の片男波海水浴場近くに「8の字公園公衆トイレ」を建設。公園を利用する保育園児が貝殻を外壁に貼り付けるワークショップを企画した。地域に愛されるトイレとなり、住民が20年以上、毎日欠かさず掃除している。「今でもきれいなままのトイレが維持されていることに感動する」とほほ笑む。

10年には市教育委員会の依頼を受け、歴史的建造物の映像を記録する事業に参加。上映会を開き、建造物の歴史を分かりやすく紹介した。

「学生時代は何もない所だと思っていたが、和歌山に戻り、まちには魅力ある建物が多くあると分かった。それを多くの人に伝えていきたい」と、路面電車の導入を目指す会を設立した。電車を利用して、身近にある歴史的建造物を駅から歩いて巡るまち歩きを提唱。和歌山を愛し、より良いまちになることを目指し、これからも活動を続けていく。

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