江戸時代の松の伐採根展示 和歌浦街道の名残

和歌山城から紀州東照宮に通じた参詣道「和歌浦街道」に江戸時代に植えられたとされる松並木の伐採根3本が、和歌山大学松下会館(和歌山市西高松)の敷地内に保存展示されることになった。伐採根は、松並木が江戸時代に同街道に実在した大きな証拠となり、江戸時代の参詣道や和歌浦街道の田園風景を想像できるなど、貴重な歴史遺産とされる。

現在の高松交差点から五百羅漢寺や和歌浦口辺りまで続く約800㍍の松並木は、1926年に「和歌浦街道ノ松並木」として県の史跡に指定を受けて保護された。しかし、43年に指定が解除され、軍需木造船の資材として約200本の全てが伐採された。

約80年が経過した2021年10月、同大学の藤本清二郎名誉教授(75)が国道42号水軒口交差点付近で、国土交通省による地下共同溝設置工事の現場を偶然通りかかり、伐採根が掘り起こされる様子を目にした。貴重な歴史遺産を後世に伝えようと保存に向けて動き、伐採根は県で保管された後に同大学の所有物となり、展示に向けて準備を進めてきた。

伐採根の年輪から、松は1830年代から60年代ごろにかけて植えられたものと推測される。展示される伐採根は最長部で約2㍍。伐採された位置関係などから、道幅は約5・5㍍だったと推定できるという。

防水加工などは施されず、ほぼ掘り起こされた状態のままで保存される。展示は、地域の有志団体である和歌浦松並木顕彰会が看板や屋根の設置など保存展示に要する費用を募り、実現した。

1月26日には除幕式が行われ、関係者ら約40人が出席。和歌山大学の本山貢学長(61)、顕彰会の木下守代表、山口一郎代表ら6人が幕を引いた。本山学長は「多くの市民の方が歴史と文化を継承していく意味で、和歌山大学、和歌山県、和歌山市を応援していただく拠点になればと期待している」と呼びかけた。

近世史を研究する藤本名誉教授は同館で、昭和初期や伐採根発見時の写真などとともにスライドで松並木の歴史について解説。藤本名誉教授によると、今後も周辺で伐採根発見の可能性があるという。

 

保存展示されている伐採根

 

除幕した本山学長㊧ら

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