WAKAYAMA NEWS HARBOR
和歌山さんぽみちプロジェクト

限られた地域で栽培「津之香」

前号では、適度な酸味と濃厚な甘みが特徴の、和歌山県オリジナル品種「田口早生」を取り上げた。これまで、収穫されてから一定の期間、貯蔵されてから出荷される蔵出しみかんを取り上げてきたが、この時期に収穫期を迎える晩生の品種がある。今週は一部の地域に限られて栽培されている希少品種である「津之香(つのかおり)」を紹介したい。
津之香は「清見」と「興津早生」の交雑実生で、1972年に長崎県の果樹研究所で生まれた品種。91年に品種登録されている。果実の大きさは160㌘程度で一般的な温州みかんと変わらない大きさ。果皮は橙色で清見よりも濃い印象。12月中旬には完全に着色するが、クエン酸の含有量の減少が清見よりも遅く、成熟期は3月下旬となる。
栽培地域は樹上で越冬が可能な地域に限定され、年間の平均気温が17度を超える温暖な地域が適地とされる。栽培面積が少ないため農水省統計の値として公開情報はないが、熊本県や佐賀県、和歌山県で栽培されているという。気象庁の公表値では、和歌山県(和歌山市)の平均気温(91年~2020年)は16・9度とされているので、栽培に適した地域といえよう。
果皮は硬めであり手でむくことは難しいため、ナイフでスマイルカットに切るのがお薦め。食してみると果汁が多く、甘味と酸味がともに強い印象。糖度は15度程度になり、減酸が遅い品種であるため酸味も強い。温州みかんというよりもオレンジに近い味わい。種がほとんどなく食べやすい。
これから4月下旬にかけて旬を迎える津之香。筆者は海南市(下津)で栽培されたものを産直市場で購入した。希少な品種で目にする機会は限られるかもしれないが、ぜひ味わってほしい逸品だ。
(次田尚弘/和歌山市)