WAKAYAMA NEWS HARBOR
和歌山さんぽみちプロジェクト

食味が優れた高級品種「まどんな」

前号では、貯蔵技術を活かしブランド化が進む、濃い味と香りが特徴の「麗紅(れいこう)」を取り上げた。今週は、旬は過ぎているが、麗紅に引けを取らないほどの深い甘さが特徴の「まどんな」を紹介したい。
まどんなは、1990年から愛媛県の果樹試験場で育成が行われ、2005年3月に品種登録された。品種名は「愛媛果試第28号」。販売時、JAから出荷されるものには登録商標の「紅まどんな」の名で販売。名前の由来は、愛媛県松山市が舞台の夏目漱石の小説「坊ちゃん」に登場する「マドンナ」にあるという。
「南香(なんこう)」と「天草(あまくさ)」を交配してできた品種で、果重は250㌘程度と大きめ。ヘタの方がやや盛り上がっているのが特徴。外皮が薄くて柔らかく、デリケートであるため、雨が当たらないよう、ビニールハウスなどで施設栽培されることが多い。外皮と果実が密着しているため、手では剥きづらく、ナイフでスマイルカットに切って食べるのがおすすめ。じょうのうも薄く、種はほとんど入っていないため、食べやすい。
魅力は何といっても糖度の高さと果汁の多さ。紅まどんなは糖度10・5度以上、酸度1・2度未満という基準を満たす必要がある。贈答品として好まれ、価格は2Lサイズ5㌔で8千円程度。1個あたり400円程度に相当する高級な品種といえる。
農水省統計(2020年)によると収穫量は4200㌧。愛媛県では、県が育成・登録した品種を種苗法に基づく育成者権保護の観点から、県外での栽培を認めておらず、愛媛県独自のオリジナル品種となっている。
近年、栽培地域を限定しブランド化を図る動きが進む。地域の特性を活かした魅力ある柑橘(かんきつ)が生まれ、農業の振興につながることを期待したい。
(次田尚弘/和歌山市)