地下水浄化の新センター完成 ろうさい病院

災害対応力さらに充実

 

和歌山ろうさい病院 地下水汲み上げ浄化センター完成

 

和歌山ろうさい病院(和歌山市木ノ本、南條輝志男病院長)が整備を進めてきた「地下水汲み上げ浄化センター」が完成し、5月7日に竣工式が行われる。大規模災害などで断水が発生した場合に自給できる水量が飛躍的に増え、災害時の医療の継続に加え、近隣住民の安心安全にもつながる新設備となっており、市北部唯一の災害拠点病院として、より災害に強く、安心の地域医療を守る機能が充実した。

完成した貯水槽(右手前)から浄化した地下水を供給

完成した貯水槽(右手前)から浄化した地下水を供給

 

和歌山市の紀の川以北には市民の約40%が住むが、同病院が2012年3月に県から指定を受けるまで災害拠点病院はなく、災害時の医療拠点の不在が心配されてきた。

東日本大震災の発生直後、11年4月に就任した南條病院長は、南海トラフ巨大地震などに備え、「和歌山ろうさい病院を大規模災害に強い、地域の拠点病院にしたい」との強い思いから、災害対応機能の強化に継続して取り組んできた。

同病院がある木ノ本地区には海抜が低い土地が多く、津波が起きれば海からに加え、紀の川の支流・土入川からの浸水被害のおそれもあり、災害時の孤立に対応するため、15年7月には屋上にヘリポートを設置し、DMAT(災害派遣医療チーム)の待機スペースや災害医療の訓練ができるスキルスラボ、物資の備蓄倉庫、災害時に支援を要する高齢者など災害弱者の一時避難場所にも活用できる多目的ルームなどを備えた「災害医療研修棟」を建設した。

さらに、22年3月には「災害医療対応棟」が竣工。18年9月の台風21号に伴う停電により、一部の医療を中断せざるを得ない事態となったことを教訓に、非常用の自家発電能力を2倍にし、消費電力が大きいMRIやCTの使用も含め、平時と同じ医療を提供できるようにした。より多くの負傷者を受け入れられるスペースを確保し、新型コロナウイルスなど感染症に対応する体制も充実させた。

 

飲用も可能な水を確保 給水能力4倍、地域に安心を

大災害に備えた体制整備を着々と進めてきた同病院は今回、「水」の確保の課題に取り組んだ。

きっかけは21年10月、六十谷水管橋の崩落により紀の川以北のほぼ全域、約6万世帯、13万8000人が断水に見舞われたこと。約1週間の断水の間、同病院では各地から派遣された応急給水車による給水が行われ、大規模な診療制限は避けられた。しかし、大地震などが発生した場合には、断水だけでなく道路が寸断され、給水車が来られない事態も想定される。

断水になっても水を確保し、医療を継続して提供するため、地下水を利用して医療用水を確保できる「地下水汲み上げ浄化センター」の構想が生まれた。

同病院は県と協議を重ね、「災害時拠点強靭化緊急促進事業補助金」を活用して同センターを整備することとし、24年1月に着工、同年3月に完成した。総工費は約1億4000万円。監理コンサルタントは㈱岡本設計(和歌山市土佐町)、施工は㈱小向商会(同市小松原通)が手掛けた。

同センターは、井戸から汲み上げた地下水をろ過し、隣接の貯水槽にため、災害時には同病院の各棟に供給する。

給水量は、従来の一日約30㌧から4倍の120㌧以上に飛躍的に増加。不純物の除去率が高いRO(逆浸透)膜を使用し、飲料水としても利用できる。

11年9月に発生した紀伊半島大水害では、断水した県南部の中核病院で人工透析などができなくなった例もある。医療用水が足りなければ手術道具などの洗浄もできず、手洗いが不十分になり、感染症のリスクも高まる。地域医療の拠点となる病院で、清潔な水を確保することは極めて重要だ。

六十谷水管橋崩落事故による断水時には、自宅のトイレが使用できなくて困った近隣住民が、トイレを使用させてほしいと和歌山ろうさい病院を訪れたこともあった。

南條病院長は「今までの給水機能は病院で使用する分だけだった。患者を優先するのはもちろんとして、地域住民の安心に少しでも結び付くようにパワーアップしたかった」と話す。

同病院の取り組みがモデルケースとなり、他の災害拠点病院などにも広がることを願っており、今後も地域の医療を守り、住民の安心安全に貢献する取り組みを続けていく。

 

従来の4倍以上の給水能力を確保

従来の4倍以上の給水能力を確保

 

RO(逆浸透)膜で処理し飲用も可能

RO(逆浸透)膜で処理し飲用も可能

 


 

災害医療三本目の柱完成
病院長 南條輝志男

私は着任以来、大災害に強い病院づくりに邁進してきましたが、この度、県と国(国土交通省)の深いご理解とご支援の下、地下水汲み上げ浄化センター竣工式を迎えることができました。関係各位に心から感謝申し上げます。これにより「災害医療研修棟」「災害医療対応棟」に続き、三本目の防災の柱ができました。
直近でも年頭の能登半島地震に引き続き、4月に愛媛・高知地震が発災し、ライフラインの重要性を改めて痛感させられた中で、いつこの地域に同様の震災が起こるか分からない南海トラフ地震に対する不安が強まってきたさ中、このタイミングで最も重要な給水が確保できたことは病院にとってのみならず、地域住民の皆様にとりましても安心・安全を供給できるものと確信しております。
今後も地域の皆様の期待を裏切らないブランド病院として更なる活動をすることをお誓いします。

 

緊急時の備えに敬意
衆議院議員 二階俊博

和歌山ろうさい病院地下水くみ上げ浄化センターの竣工、おめでとうございます。
私は、南條病院長から「和歌山ろうさい病院を大規模災害に強い、地域の拠点病院にしたい」という強い決意を幾度となく伺ってきましたが、この度、国土強靭化政策の一つである「災害時拠点強靭化緊急促進事業」制度を活用して、自家発電装置などを備えた「災害医療対応棟」の建設に続き、今回の地下水くみ上げ浄化センターの竣工と、緊急時に備える体制の整備を着々と進めてこられていることに敬意を表したいと思います。
南條病院長を先頭に、役職員一丸となって、地域医療のニーズに応えて、和歌山ろうさい病院の益々のご発展とご関係の皆様のご活躍を期待しています。おめでとうございます。

 

安心の医療に貢献
県知事 岸本周平

地下水汲み上げ浄化センターの完成おめでとうございます。
令和3年10月に発生した和歌山市水管橋崩落事故では、紀の川北部地域が断水し、災害時の水道インフラ整備という課題が浮き彫りとなりました。これを受けて県が、災害拠点病院の更なる強化施策を打ち出したところ、いち早く和歌山ろうさい病院が手を挙げてくれました。令和3年度に整備された災害医療対応棟に加え、本施設も完成し、災害医療体制の一層の強化につながるものと、大変心強く思っております。
和歌山ろうさい病院は、紀の川以北にある唯一の災害拠点病院として重要な役割を担っていただいております。
今後とも地域住民への安全で安心な医療の提供に大きく貢献していただくことを期待いたします。

 

機能強化、心強い
和歌山市長 尾花正啓

地下水汲み上げ浄化センターの完成を心からお祝い申し上げます。
災害時において必要な医療を提供するためにはライフラインの確保が不可欠です。今回の地下水汲み上げ浄化センターの竣工は、そのための重要かつ大きな一歩となります。
災害時における医療・救護の重要性は高く、和歌山市北部地域の安全と安心を確保する災害拠点病院としての機能強化を本市としても大変心強く思います。
今後も一層連携を密にし、災害に強い安心して暮らすことができるまちづくりを推進してまいりますので、平時における地域医療体制の強化と併せ、お力添えをお願い申し上げます。
和歌山ろうさい病院が地域の拠点病院として益々発展されますことを祈念いたします。

 

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