2009年09月30日

04.文化・くらし

「風の旅人」に 「光跡/追憶…和歌山」、和歌山のヨハン・オーカタさん

「虚心に誠実に世界と向き合いたい」

写真を撮り始めてわずか10カ月。 だが10月1日発刊の雑誌 『風の旅人』 第38号に登場。10ページにわたり 「光跡/追憶...和歌山」 と題したモノクロ9枚とエッセーが掲載される。 同誌は、 セバスチャン・サルガドやユージン・スミス、 川田喜久治などそうそうたる写真家が作品を発表し、 白川静、 茂木健一郎、 養老孟司らが随筆を寄せてきたグラフ文化誌。 「理念に共鳴しあこがれていた雑誌です。 うれしい」 とほほ笑む。

カメラを持って3週間でプロに 「天性の写真家の資質がある」 と言わせ、 ことし3月と5月に東京新宿のギャラリー・ニエプスで個展を開催。 12月は、 この夏撮影した和歌山市の作品個展を同ギャラリーで開く。 しかし 「写真には実は抵抗があった」 と意外な言葉が飛び出す。

◇ ◇

幼い頃からピアノとクラシックギターを習った。 音楽と本を読むことに熱中。 高校生でDJをやり、 ロックバンドを組んだ。 19歳でミュージシャンを目指し上京する。 しかし病気のため和歌山に戻った。 死をも考えたという。

写真を勧めたのは主治医。 カメラを手に、 大阪、 広島、 高知など行き先も決めずに3週間歩き写した。 「世界がないと写らない写真が、 少しだけ世界を僕の方に引き寄せてくれたのかもしれない。 写真が死に向かう僕を引き戻してくれた」 と振り返る。

迷いはなかった。 作品に惹かれた写真家中藤毅彦さんに会いに東京へ行き、 ワークショップに通った。 素晴らしい写真や人と出会い、 感動し、 「写真とは何か、 自分はどういう写真を撮りたいのか、 自分の使命は」 と語り合い思索した。

◇ ◇

「この方々がいなければ今の自分はなかった。 感謝しています」 という3人がいる。 一人は中藤さん。 「裸一貫で東京に出た僕を世話してくれ、 写真とは何かを教えてくれた」。

もう一人は、 「写真を通した生き方を教えてくれた」 佐伯剛さん。 『風の旅人』 編集長だ。 自分がリアリティーを感じていない世界を撮ることへの罪悪感に悩んだが、 自分の記憶に刻まれた唯一の場所和歌山を撮ることで乗り超えた。 その示唆を与えてくれた人でもある。

そしてもう一人は、 和歌山市の西本カメラ中央店の田中公康さん。 「何も知らない一番未熟な時に、 印画紙の扱い方から写真への心構えまで、 父親のように厳しく優しく教えてくれた。 写真を好きになったのは田中さんのおかげ」 と話す。

行動力と吸収力のすごさ。 作品の力強さと人懐っこい笑顔、 嘘を嫌う誠実さが、 会う人を引きつけ応援したい気持ちにさせる。

「写真は世界を素材にしてしまう自己表現。 だから被写体である世界を自己の尺度で表現するのではなく、 世界側から自己を見る視点で、 誠実に謙虚に対峙したい。 虚心の裸の目で世界をただあるがままに写したい」。

今回の 「光跡/追憶...和歌山」 と12月に発表する和歌山市の写真は、 その出発点になる。 (千)

【風の旅人】発行所/ユーラシア旅行社 (東京)。 年3回発行。 38号は10月1日発行。 和歌山市松江のメッサオークワガーデンパーク和歌山店WAY、 または同誌ホームページから購入できる。



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