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2009年03月20日
時を超える仲間の絆 「劔岳・点の記」


銀幕への招待状 web版  Vol2
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 公開前の映画のラストシーンを書くのは反則だということは承知している。だけど、これだけは伝えたいということが、最後のクレジットにあるのだから仕方がない。できるだけ興味を削がないように書こう。
 映画はある人物の「仲間」というセリフで終わる。その言葉を受けるかのように画面に「仲間たち」と黒い文字が浮かび上がる。そしてその文字は消えることなく、画面の左側から縦書きのラストクレジットが流れてくる。俳優の名前が同じ大きさでならび、続いて監督やプロデューサー、スタッフの名前も続く。それらの名前に肩書きはない。ひとつの映画に関わる人々が「仲間たち」の名の元に延々と流れてゆくのだ。
 木村大作監督によると「こんな終わり方は世界初だ」とのこと。確かにこんなクレジットは観たことがない。だけど、映画の凛とした印象が心に響く中でのこのクレジットに、ぼくは熱い物が胸をよぎるのを感じていた。
 「劔岳・点の記」は明治40年、陸軍の命を受け日本地図を完成させるために27カ所の三角点を打つ測量手たちの物語。彼らは、ただ「地図を作るため」という仕事を成し遂げるために吹雪や雪崩が襲いかかる中を前人未踏の劔岳を目指す。陸軍幹部の過大な期待や「山岳会に負けてはいけない」との思惑よりも「自分たちの仕事を成し遂げる」ことに命を賭けた男たちの不屈のドラマが描かれる。
 木村監督は、彼らの黙々と仕事に打ち込む姿を自らの人生に重ねる。「私は映画に命を賭けている。撮影に献身して手を抜いた記憶はない」と言う。確かに木村監督の積み重ねてきたキャリアはそれを物語る。日本を代表する第一線カメラマンとして築いてきた頑固な精神は高倉健や岩下志麻といった名優の信頼を得て「木村さんのカメラでなければ」と言わしめるほど。木村監督は「人との出会いによって作品を選んできた」と述懐するが、いい仕事をするという目的にこだわり続けてきた結果の人との出会い。その姿勢が、映画の中の測量手たちの不屈の魂と呼応し合い、あのラストシーンを作り上げた。
 木村監督は「友情は裏切るけれど仲間は裏切らない」という。「友だちだって言ったって女や金で裏切るだろう。だけどねひとつの目的を持って仕事をする仲間は裏切らないんだよ」。確かにそうだ。特に厳しい山の中や映画の現場では、お互いの信頼を失うことが死や大きな危険につながる。映画の中の「仲間たち」が、映画を作る「仲間たち」につながるラストクレジットへの流れは、時を超えてほとばしる熱い気持ちを伝える。
 映画「劔岳・点の記」は、仲間への信頼と仕事への誇りを描く名作だ。
   6月30日公開 木村大作監督「劔岳・点の記」

(山本哲也)


2009年03月20日 19:34


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