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2004年04月20日

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尖閣列島警備には無理がある なぜできない防衛施設の建設
5_5.gif ■2004鶴保庸介

 「不法入国禁止」。紀南の海岸線を走るたびいつも目に付いていた看板がある。中国や朝鮮半島の不法入国があるため、なぜか日本語で大書している。日本語を解する人向けに不法入国を禁止しても始まらないのに、という議論はともかくとして、日本という国が四方を海で囲まれ、どこからでも上陸できるということを我々は肌で感じている。
 先日、中国の活動家が尖閣列島に上陸したというニュースが流れた。七人の活動家は結局、上陸後逮捕され、二日後には入管法違反ということで本国に強制送還されることになるのであるが、ニュースが流れた翌日、海上保安庁に抗議の目が向けられることになる。
 上陸を阻止できなかったことがけしからん、というものである。しかし、もっとも長い海岸線を持つ県の出身として、また、海上保安庁を担当する国土交通省政務官としてこうした世論に対し、いくつかの点で反論したい。
 確かに国土交通省の外局である海上保安庁は海の安全、秩序維持の役割を負って、不法入国阻止の役目を負っている。しかし、日本が四方を海に囲まれたとてつもない海上国家である以上、膨大な海岸線のどこからでも上陸は可能であり、これを阻止するにはそれなりの船の充実が必要なはずである。
 しかし、保安庁の装備拡充は自衛隊と同種に論じられることが多く、犯罪増加を背景に警察が比較的簡単に増員されるのとは様子を異にしている。
 今回の事件においても上陸を阻止するには尖閣列島を一隻の船で警備することに無理があったと強く主張したい。列島への上陸が国際的に注目され、それをなんとしても阻止したいというのであれば、島全体を守る防衛施設を作るか、よりたくさんの保安船を配備するかをしなければならないが、保安船は南方の海岸線全体を警備するにはあまりに貧弱なものしかないのである。多くの国民のご理解を促したい。
 また、もうひとつは、本当に政府がこうした島嶼部の主権を主張する決意があるか、ということである。先述したように、防衛施設の建設がなぜできないのか。保安船の重点配備がなぜできないのか。これらへの解答は国土交通省にはない。外交、あるいは官邸の意向だといわれており、高度な政治判断で舵取りをしているという。しかし、現実には中国からの活動家が本国を離れるには本国の政治的なバックアップがなければなしえない。
 政治的許可なしに不法出国しても帰国後厳罰に処せられるので、水面下でなんらかの動きがあったに違いない、と中国の友人は断言する。
 現に、逮捕後、実にタイミングよく抗議のコメントを出し続けた中国政府の在りようについては日本政府としても看過してはならないはずである。
 そして法の不備。尖閣列島は埼玉県内に住む日本人が現に所有していることをいったい何人の方がご存知だろうか。日本人が所有権を持つ、れっきとした日本の国土というなら、日本人がそれらの地域を訪れることは自由なはずである。これは移動の自由という憲法上保障された重要な権利である。しかし、今回の事件で明らかになったのは日本人が列島に移動するのを保安庁が差し押さえた、その根拠は警備上の問題となる行為を排除するための軽犯罪法であるというのである。
 憲法上の権利を軽犯罪法で制約する国など聞いたことがない。軽犯罪法と言えば、立ち小便をしてはならない、といった程度のものが規定されているのであって、不法侵入とか、公務執行妨害などという重いものではない。
 建前上、日本人である以上は移動の自由があるけど、行かないでほしいということをにじませたきわめて日本的な解決であるが、先述したように相手国が政治的意図をもって上陸した可能性がある以上、国の特別管轄地域に指定するなどして国際的に明示されるきっちりとした法の整備を急ぐべきである。
 靖国神社参拝の問題には多くの議論がある。しかしより現実的な利益を体現する領土の問題ではっきりとした主張ができない国に国際的な尊敬はありえないし、双方の妥協も引き出しえない。奇妙な看板を見るたび、笑ってばかりはいられないと思うこのごろである。


(2004鶴保庸介)
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