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2004年06月08日

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「あいまい」の上に成り立つ制度 年金制度改革法案審議の異常事態
5_5.gif ■2004鶴保庸介

 久しぶりの徹夜国会である。世にいう年金制度改革法案の審議。ざっと、いきさつを記すと、審議開始が午前十時。前日の厚生労働委員会での強行採決に反発した野党が、委員長に対する解任決議案を出し、その決議案での趣旨説明に各党が一人三時間以上も論陣を張るという異常事態であった。延会手続きを取ったのが、午後十一時過ぎ。翌日の午前零時十分から本会議が再開され、採決の段になって野党牛歩。二時間ほどかけて委員長解任決議案は否決された。その後休憩に入ったがあらかじめ提出されていた議長への解任決議案をめぐって紛糾。議長が議場に入れぬよう実力行使をした状態で野党側は副議長を議長席へ導く。民主党出身の副議長は議長席に着くなり散会を宣言。野党は一斉に歓声を上げ議場を後にするが、与党側議員がこれに抗議して沈黙のまま議場席に残った。押し問答の末、議長が実力行使を突破し本会議場に入ってくると「仮議長を選任します」と、宣言し議場を後に。いったん休憩の後、午前七時ごろ本会議が再開。野党は出席せず(この時点ですでに野党議員の中には地元へ帰っていったものもあると後で聞いた)、仮議長を選任した後不信任決議案を採決するが、採決の段になって憲政史上まれに見る事態、本会議場の採決の投票ボタンの故障が発生。やむなく仮議長は採決を起立採決に切り替えるが、慌てて「不信任決議案に賛成の方は起立願います」と宣言してしまう。徹夜国会で疲れた議員の頭には起立するものだと思い込んでいるから「賛成の諸君は起立願います」と仮議長が言ったことに対して誤ってしかし堂々と起立したものもちらほらいた。民主党が退席していたので大事には至らなかったが、これが正常な国会であれば大変な事態だったろう。
 ざっとこんな調子で徹夜のまま土曜のお昼には和歌山へ帰ってきたが、「がんばってます」というこの稿にふさわしくない「がんばり」で疲れ果てていた。馬鹿な事をやっているなどと言うつもりは毛頭ないが、もう少し建設的な方法がないものか。野党がさまざまな戦術を使わなければならなくなった背景には、こうでもしないと国民の皆さんが興味を持ってもらえない、という現実がある。確かに、うがった見方をするとここまで頑張ったんだからという免罪符が野党は欲しかっただけかもしれない。しかし、そのようなパフォーマンスが通じる時代でないことも分かっているであろう。
 問題は、年金制度がこれらのすったもんだを引き起こす原因である。年金制度が「保険」制度の一種としてスタートしたにもかかわらず、国民に加入を義務づける強制力を持つというこの制度は、長い間多くの国民に問題とされることなく、維持されてきた。私たち日本人が得意とするところのどっちともとれるあいまいな制度であったことは否めない。一見バランスが取れてすべてが精緻に組み立てられているかのような現在の社会制度は、こうした「あいまい」な背景の上に成り立っているものが多い。大体、高速道路で制限速度を一キロ、オーバーしたからといって捕まった人は少ないであろう。では二十キロオーバーが捕まらないのか。三十キロオーバーであればどうか、などと考えていくといかにあいまいかが分かる。自衛隊が軍隊かどうかなどという神学論争に終始している憲法九条しかり。本音と建前。そう言ってしまえば身も蓋もないがこうしたことが世界に通用しない、ということは国民の多くが感じ始めている。しかし、一方で分かりやすい政治は国民に大いなる決断を強いるものである。大きく変わろうとしているという時代、われわれ国民にそれだけの覚悟があるのかどうか。これは、本音と建前の使い分けは許されない。徹夜国会の最中「目をつぶりながら議事進行を聞いていた」私も、日本人であるが。


(2004鶴保庸介)
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