■2011世耕弘成
去る15日に由緒ある紀州東照宮の和歌祭に参加させてもらった。 新緑のさわやかな気候の中、 総奉行役として裃を着て、 渡御の行列の先頭を歩かせてもらった。 和歌山の歴史を体感したひとときであった。
しかし東北は引き続き大震災の衝撃のまっただ中にある。 そして東京電力福島第一原発事故はいまだに収束の気配が見えない。 この事故の影響で避難生活を余儀なくされている方々や仕事ができなくなっている方々への損害賠償を早く進めて行かなくてはならない。 加えて、 この事故がどういう経緯で起こったのか? 事故原因の究明も早急に行わなくてはならない。
民主党政権が福島第一原発事故に関して 「事故調査特別委員会」 (事故調)を立ち上げようとしている。 法曹界、 学界、 地元自治体関係者ら10人程度で構成し、 独立性、 公開性、 包括性を原則とするそうだ。 しかしこの事故調の構図にはいろいろと問題が多い。
まず、 事故調の設置を閣議決定のみで行おうとしているところが問題だ。 首相をはじめとする閣僚の判断ミス等がなかったか? という点をメインに調査する委員会なのに、 首相が主宰する内閣の閣議決定で作った組織や首相が任命した委員が首相や閣僚相手に踏み込んだ調査などできるわけがない。
また充実した調査を行うためには一定の強制力を持った調査権限の付与が不可欠だ。 航空機事故調査委員会などは、 法律によりそういった権限を与えられているが、 閣議決定に基づく事故調ではそのような権限を持つことはできない。
さらに事故調が立ち上がってもいないのに、 事故の賠償スキームを閣議決定したことも問題である。 閣議決定したスキームでは、 一義的には東電が全面的に賠償責任を負い、 資金的に不足する部分を国から交付国債を受け取る新設の賠償機構が支援するという形になっている。 要するに100%東電が悪いということを前提に設計された仕組みなのである。 しかし本来はまず事故調を立ち上げ、 東電と国の責任割合を確定してから、 賠償のスキームを設計するのが筋である。
このように民主党が閣議決定による事故調でお茶を濁そうというのならば、 自民党として対案を出していきたい。 現在自民党では塩崎恭久議員を中心に事故調設置の独自法案の検討を進めている。 具体的な法案の中身は、
①事故調は国会に設置し、 委員は国会が議決して任命する。 もちろん内閣からは完全に独立させる。
②委員からは原子力関係者は極力排除する。
③偽証罪付きの証人喚問、 書類の強制的提出などの強制力のある調査権限を付与する。
④現・旧閣僚、 行政機関、 東電など幅広い調査対象とする。
⑤設置から6カ月以内に調査結果を報告する。
というものである。
内閣が閣議決定でいい加減な事故調を設置したとしても、 議会の権限でより強力な事故調の設置を提案していきたい。 民主党内でも良識ある議員達は反対しないはずである。
(2011世耕弘成)
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