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2002年08月13日

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「面白い議論」だけの国会では… 理想と現実を埋める作業こそ政治の本質
5_5.gif ■2002鶴保庸介

 143国会が終わって出演したあるテレビ番組でこの国会の総括をしろというので返答に窮した。緑の雇用事業に象徴される林業の振興、東南海・南海大地震対策基本法の制定などでは私にも多少の貢献をさせていただいたとの自負はあるつもりであるが、マスコミが注目しているものばかりではない。瞬間的に番組ディレクターが喜びそうな返答を探していた自分が情けなかったのである。
 しかし強弁させていただくならほとんどの議員は同じジレンマを抱えていることと思う。
 国会議員がマスコミを意識することは必ずしも悪いことばかりではないが、明日の朝刊に載ることを本分と考えてはならないはずである。国会質問で「週刊誌にこんなことが書いてあったが、本当か」などとでる。国会議員の国政調査権はどこへいったのか。私はこれまで五十回を超える質問を行ってきた。はじめのころ満足のいく原稿ができたらもしかして明日の朝刊にでも取り上げてくれるかしらんとにんまりしていたものであるが、あまりにばかげたことにエネルギーを使っていたものであると最近は反省している。
 ただ看過できないのは多くの議員がこのジレンマに(誘惑に負けて?)負けて明日の朝刊に「載せる」質問を作っているという事実である。野党議員の中にはいまだにマスコミが喜ぶからとせっせとスキャンダル探しに明け暮れている者もいる。確かにスキャンダルはあってはならないし、そのような人を指導者として国会へ送ることには疑問を感じる。しかし、本当に必要なのは政治家をスキャンダルで追い落とすことではなく、いかにしてそのような政治家を生まないシステムをつくるかの議論なのである。国民だって、ちゃんと議論してくれているか知りたいに違いない。未来永劫とはいわないまでも安定した政治システムを作るためにはどうすればよいかを議論する場が国会なのである。
 前国会、私は個人情報保護法の与党三党策定プロジェクトチームのメンバーとなって追われるような日々が続いた。当然そこではマスコミの反発が大いに予想されたが「今の政治はあまりにマスコミにおもね過ぎるのではないか。個人情報は本人のものであり、国のものでもマスコミのものでもないはず」であるとの本来の趣旨から、マスコミは異常な特別扱いをすべきではないと私はあえて主張した。ただ、より襟を正すべきは官であり、行政機関が持つ個人情報が漏洩された場合はとくに厳罰に処する条項を入れるよう主張もした。結局、こうした主張は取り入れられず、その後、まもなく防衛庁のリストが漏洩していることが発覚して個人情報保護法に反対するマスコミの格好の餌食にされたのはご案内のとおりである。
 政治が理想を語り、マスコミがそれを批評する。こうした民主主義の当たり前の姿が今の日本ではぼやけたものになっていると感じるのは私だけではないはずである。
 私は先日、通貨統合したばかりのEUを視察する機会を得た。ヨーロッパの統合という理想を現実のものとしようとしている実情をみて何より感動したのはかの国々でのマスコミの態度である。断っておくが私はいわゆる西洋至上主義者でも、民主主義万能主義者でもない。しかし、日本での論調は壮大な実験と賞賛しながらもまだ道険し、現実のものには程遠い、という評価が一般である。統合に向けさまざまな活動があることを中立公正に報道する姿には学ぶところもあるのではないか。ローマが繁栄したのも、多民族への寛容という、当時言葉では分かっていても現実のものになしえなかった理想を実践したからという事実を誰よりも分かっているのではないか。理想なくして何が政治か。目標なくして何が指導者か。
 これまで目標としてきた豊かさを享受し、これからの日本が新しい価値観、哲学を持ってあたらねばならない今日にあって「面白い」議論だけではこの困難な時局を乗り越えられることはできない。理想と現実を埋める作業こそが政治の本質であるというのが私の持論だが、理想が何たるかを忘れてしまった中では政治は存在しない。マキコ伝、ムネオ伝ではこの国の未来は開けないのである。


(2002鶴保庸介)
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