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2007年02月06日

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機械的な医療現場、地方の医師不足等課題 山積の厚生分野の現状を憂う
5_5.gif ■2007鶴保庸介

 厚生労働大臣の発言が波紋を呼んでいる。 女性は子供を生む機械? そんなことあるわけない。 しかし、 最先端の不妊治療を経験したものとして、 発言に対する批判の大合唱になんとなく違和感を感じるのである。
 経験した人ならわかると思うが、 一般的に男性は不妊治療に疎外感を感じている。 そこでの男性の役割は配偶者に対する優しさとか、 思いやりとかより、 はっきり言って 「精子製造機」 である。 まさに最先端の医学は職人技であり、 医師という職人に命の誕生を預けているという意味では仕方のないことなのかも知れないが、 情けないやらなんやらで涙することも多い。 男性がそうだから女性もというわけではないが、 不妊治療の現場は多くの国民が想像するよりはるかに機械的だ。
 もっと言うと、 (ここからはべらんめえ調になるが)厚生の分野にはあまりに非人間的だ、 機械的だと叫びたくなるようなことが多い。
 最近の看護師不足に悩む病院。 有名な7対1。 ベッド数7床に対して1人の看護師がいれば保険点数を加算するというやつであるが、 看護師の確保がままならない。 何で7床なの? 患者さんで満室になっていない病院でも看護師がいれば同じように加算するの? 日本のベッド数は多いから減らそうというのが本当の狙いだというが、 それならほかにもベッド数の不必要に多い病院に何らかのペナルティーを課すとかほかの方法もあるだろうに。 命にかかわる問題なのだから機械的に数字をあてはめてはならない。
 命にかかわるといえば地方の医師不足も深刻だ。 大学医学部を卒業して臨床研修に携わる多くの医師が、 症例が多くよりよい指導医のいる病院で修行をしたいと思うのも無理はない。 しかし、 そのおかげで、 高齢化が進んで、 立地条件の悪い地方の病院では医者不足が深刻である。 特に県立の医科大学がひとつしかないわが和歌山県では、 全医師数の半分以上が和歌山市内に集中している。 過疎地の医師の不足は慢性的になっていて、 若い研修医すら確保がおぼつかない。 そこで機械的にベッド数に応じて医師を割り当てることも検討され始めているが、 私は反対だ。 医療には人と人の間をつなぐアナログの何かが必要である。 信頼がなければ医療は成り立たない。 強制的につれてこられた医師の立場に立ってみても、 それは不幸である。
 私は、 ①地域医療を担うことを前提に大学の入学を許す枠を増やすこと②研修医の指導プログラムを充実させ、 研修医が多くの経験を積めるシステム作りをすること③同じような悩みを抱えた府県間同士で連携をとること④これまで地域医療を担ってきた診療所などとの連携を深めて、 時には開業医に病院の医師として勤めてもらうなどの協力体制を組むことなどを提言してきた。
 ②についてはわが県立医大は臨床研修医制度のスタート時から力を入れてきており、 これからの結果に期待したい。 ①は大変に重要な問題で、 学生の中にはふるさとに生まれ育ってふるさとに貢献したいと思っている人はいくらでもいるはずであるし、 県民の税金を使って医師になっているのだから、 県民に貢献して当たり前ぐらいの気持ちで望まないといけないと思う。 文部科学省はじめ、 関係省庁と連日のすり合わせをしているところである。
 ③については医師の現場を知っているものなら多少は興味を引くはずだ。 治療方法というのは実はいくらでもあり、 そのやり方は教えてもらう指導医によっても大きく異なるケースがあるといわれる。 もっというと、 出身大学や出身地によって違うことが多く、 他流試合をしてみたいというのはやる気のある医師にはみな共通の思いである。 いいことも悪いことも含めて 「交換留学」 をすることは、 医師個人にとってはとても有意義なことであるし、 同じ悩みを抱えている府県間同士で医師不足を引きおこすことなく立派な医師を育てることができるのではないか。
 ④についてはもちろん開業医の側からの反発が予想される。 しかし、 地域医療の原点はその地方に住む人がいてこそ成り立つのであり、 地域拠点医療がぐらつくとそもそもその社会は崩壊する危険がある。 その視点に立てば地域の医師会も多くの方が協力してくれるのではないか。
 どの方策をとっても批判は覚悟の上。 現状を憂うる同志の意見を広く請いたい。 厚生労働委員長になって生活に密着した行政への要望を聞くたび、 機械的でない政治の難しさを思う。


(2007鶴保庸介)
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