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2008年07月08日

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第二IWC設立構想欧米の押し付けから脱却、鯨文化維持へ
5_5.gif ■2008鶴保庸介

  「おいおい、 そりゃないでしょ。」 IWC、 国際捕鯨委員会の会議の場で、 私は思わずうなってしまった。 オーストラリア代表のギャレット環境大臣が 「鯨資源の活用」 とはホエールウォッチングをすること、 と意見表明をしたからである。
 IWC、 国際捕鯨委員会については何度もこの稿で触れてきたとおりであるが、 ことしはチリのサンチャゴで開催されることになった。 地球の裏側にまでやってくるのには関係国会議員もたじろいだらしく、 私が水産関係議員を代表して出席することになったのである。
 しかし、 日本の商業捕鯨再開にはもうあとがない。 IWCは捕鯨の地元和歌山県と、 日本のプライドをかけた戦いの場であった。 日本は太古の昔から捕鯨技術を磨き、 共存してきた。 日本中のあちこちに鯨神社なるものが存在し、 鯨の利用を神に感謝してきたのも日本人と鯨がいかに深い関係であったかということを物語っている。 世界文化遺産に登録された、 文楽の人形を操る糸にも鯨の髯が利用されていることはあまり知られていない。 いくら強調しても、 し過ぎることはない、 日本社会に深く根づいた鯨文化が商業捕鯨の禁止という欧米各国からの 「押し付け」 により滅びようとしている。 そもそも鯨資源の減少を招いたのは19世紀から続くイギリス、 アメリカの鯨油獲得のための乱獲が発端であることをご存知だろうか。 そして時代が進み、 南氷洋でノルウェーが 「出張」 捕鯨を始めると、 これに危機感を持ったイギリスなどが、 ノルウェーだけに鯨資源を利用させてはならないと 「規制」 をかけようとして作ったのが、 IWCである。 つまり、 IWCの目的は、 初めから鯨資源の持続的活用の枠組みをどう作るかということであり、 冒頭の発言はこの歴史的経緯をまったく無視したものであるということになる。 商業捕鯨の禁止とは、 鯨類の資源回復を待つこと、 商業捕鯨 「モラトリアム」 (猶予) というのがIWCでの商業捕鯨禁止の根拠なのである。
 それなのに、 とすねているわけにはいかない。 現実は確実に捕鯨全面禁止に動きつつある。 本来はアメリカの圧力に屈して商業捕鯨の禁止が行われたその時点で、 IWCからの脱退を検討すべきであったが、 いよいよ、 日本は反撃に出ることにした。
 つまり、 捕鯨国の集まりを頻繁に持つことによってIWCからの脱退、 本来のIWCの設置目的に沿った新たな機関の設置を求めていくことをちらつかせながらIWCの交渉に臨むしかないということである。
 それが今次IWCであり、 私はこの 「第二IWC設立構想」 のまさに立ち上げの現場に居合わせることになったのである。 そのおかげでたくさんのアフリカおよびカリブ諸国の代表と話す機会を得、 私は自身の今後の国際社会観に大きく影響する経験をさせていただいた。 それは、 「国際社会」 なるものの現実と変革の兆しなるものといえばよいであろうか。
 いかにこれまでの国際社会が欧米中心のものであったか。 これについては改めてここで繰り返す必要はないであろう。 冒頭の理不尽極まりない発言のほかにも、 シーシェパードなどという暴力的捕鯨阻止活動団体の代表者が、 IWCの現場に来ていることを見てもわかる。 チリ政府はなぜ入国を許したのか。 彼らは何度もこれら違法行為を非難する決議を出したまさに犯人であり、 明らかな 「犯罪者」 である。 これが 「現実」 である。
 しかし、 世界はさすがにそれでは終わっていない。 第二IWC設立準備会には反捕鯨国の代表格とも言うべきオーストラリアの科学者が議長として出席してくれていたし、 ギニアの代表者は 「われわれはアフリカ独立を勝ち取った。 それは欧米の価値観の押し付けに人間としての尊厳をかけたからだ。 それはこの捕鯨問題でも同じである。 われわれは新たな闘争を世界に向けて開始する」 とまで言ってのけた。 中国、 韓国もアジアの文化の維持を訴える。 世界の良心。 日本がその先頭に立つ決意があるかどうか。 私たちの捕鯨問題はもっと大きな意味を持ち始めている。


(2008鶴保庸介)
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