世の中のデジカメの流れはひたすらに「高画素化」であります。APS-Cサイズに1500万画素とかどんだけよ、な感じも否めない今日この頃ですが、ふと、デジカメの歴史をひもときますと、これまでにいくつかの峠を越えてきていまして、それはすなわち「撮像画素の極小化の工業技術」の歴史でもあります。
今回は、世界で初めて民生機として300万画素超えを果たしたカシオの「悲しき」名機、QV-3000EXをご紹介します。
同機が登場したのは2000年2月。ミレニアム年がスタートし、「新世紀」という言葉に世間が浮かれ気味の頃でした。定価は8万8000円。いまどきの民生品の感覚ではありえない値段設定ですが、当時は普通だったんですよ、なんせ浮かれてましたから。
市場では、IXY-DIGITALなどポケットサイズで200万画素程度のいわゆる「コンパクトデジカメ」が大人気。300万画素超えは十分なエポックでしたが、そのボディのでかさ(&ダサさ)から、全く売れなかったようです。コンパクトデジカメの波に乗り遅れたカシオの絵作り的な評判も、いまいち良くなかったと記憶しています。
そんな定評を払拭しようと投入されたのが同機。レンズはF2.0~2.5と、今時のコンデジではなかなか見られないクラスの大口径キャノンレンズを搭載しています。カシオの本気度が感じられる仕様といえましょう。f=7~21mmで、35mmフィルム換算33~100mm相当。光学3倍&デジタル2倍。撮影用各種パラメータはかなり細かくカスタマイズ可能です。かなりスゴい。
起動はレンズが出てくるまでワンテンポ待たされますが、起動してしまえば動きは軽快。ホールド感もなかなかによろしい。単3×4本駆動でコンパクトフラッシュ記憶なのもポイント高い。
合焦も機敏ですが、合焦の瞬間、ライブビュー液晶とファインダーがブラックアウトするのだけはいただけませんね。こういう仕様、他社のカメラでも結構あったと思いますが。
スイッチ類はご覧のとおりかなりシンプル。しかし機能はてんこ盛りですから、メニューの階層は必然的に深くなる。結果、操作性は非常に悪い。感度や絞りなど、かなり潜らないと変更できない。非常に残念な仕様といえますな。
撮影サンプル(リンク先は全オート設定&無加工)。どうですか、なかなかに高画質じゃないですか。対物が明るいだけに、解像力もなかなかのもんだと思います。落ち着いた色調も捨てがたい。新聞の現場の意見は「十分使えるレベル」。
ヤフオクで実勢相場1500円程度のカメラとは思えません。
作画はいろいろ設定で変える事ができます。彩度はちょっとさわったほうがビビッドに写っていいかもですな。
写りはなかなかなのに、そのフォルム&操作感のまずさゆえ「名機」と呼ばれることのない同機。今や物足りないという方も多いでしょうが、情操教育に子どもに持たせるとかなら、ちょうどいい感じのカメラだと思います。クソ安いし。
QV-3000EX 当時のリリース・CASIO
http://www.casio.co.jp/release/old/qv_3000ex.html