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昭和12年の虎の像
伏虎なのに伏せずに歩いている!?。 珍しい今はなき虎の立像の写真が、 和歌山市新堀の竹本貞夫さん(76)宅で見つかった。伏虎城の異名がある和歌山城内の伏虎像が昭和34年に建てられる以前のもので昭和12年の年号が記されている。和歌山城管理事務所によると立像は大正12、 13年ごろに建てられたといい、 銅製だったため戦時下の昭和17年1月26日に、国に供出されている。 像を写した写真も少なく、 管理事務所は 「貴重な資料だ」としている。
竹本さんは空き部屋を開放して、 地域の高齢者の憩いの場所 「つどいの家」を運営。 同所の壁に展示しているのを、 長女の島久美子さん(県NPOサポートセンター長)が実家に帰った際に見つけたもの。写真は和歌山城の貴重な記録として、 同センターが企画したわかやまフレンズ(ZOO)パークが14日、和歌山市小人町の市あいあいセンターで開く 「お城の動物園フォーラム」 で紹介される。
見つかった写真の裏面には、 「戦捷(せんしょう)の寅年新春、 干支に因む伏虎城和歌山公園内、 虎の銅像前にて 竹本惣次郎撮影」 とあり、 写真に写った5歳のころの竹本さんも軍服姿。 第2次世界大戦の足音が忍び寄る世相を強く反映しているようだ。
写真の像は、 郷土出身の有吉佐和子の小説 『紀ノ川』 にも記述がある。 詳細は分からないが、管理事務所の話では個人から寄付されたものだといい、 作者などは不明。 同事務所の高橋克伸さんは 「生態学的にみて形がおかしい上に、戦争に利用された悲劇の像だと思います」 とし、 これを写した写真については 「一般の人の目に入ることは、 まずない貴重な写真だといえます」と話している。
竹本さんは 「像がつるつる滑って、 なかなか乗れなかったのを覚えている」と昭和12年当時を懐かしそうに回想している。
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