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巣立ちを見守る久美子さん |
和歌山市下三毛の上野光さん(61)宅にあるバラの茂みに、 スズメが巣を作り、2羽のひながすくすくと育っている。 スズメは一般的に、 人間の生活に近い場で屋根瓦のすき間などに巣を作るといわれる。 この巣が少し特別なのは、 巣の様子が内側から観察できること。 上野さん宅では「元気に飛び立ちますように」 と、 巣立ちの日を今か今かと温かく見守っている。
5月4日朝、 コツコツとキッチンの窓ガラスをつつく音に、 妻の久美子さん (62) が気付いた。 格子枠に2センチほどのワラが重ねられ、 「何かの巣とちがう?」 とすぐに取り払おうとしたが、 近くに住む男性からスズメの巣ではないかと言われ、 しばらく様子を見ることに。 この日から上野家のスズメ観察が始まった。
それからは親と思われるスズメがワラを運び、 体をガラスに押しつけながら巣を形作る姿が、 ガラスの内側から見えるのが何とも愛らしく 「頑張ってるわぁ」 と感動。 少しずつ愛着が芽生えるうち、 巣は一週間ほどで完成した。
一つ幸運だったのは、 スズメが入り口とは別に、 室内から見える部分にも丸い空洞を作ったこと。 茂みに覆われて外からはほとんど確認できない巣の中の様子が、室内から細かに伝わる。
変化があったのは5月29日。 ガラス超しに黄色いくちばしが2つ確認できた。「ひなが生まれてる」。上野家では毎朝スズメの鳴き声が目覚まし代わりとなり、 台所のテーブルに座っては窓ガラスを眺めたり、 出入りする親スズメの様子をすぐ隣にある出窓から見るのが日課となった。 成長したひなは最近羽ばたくしぐさを見せており、 「あぁ、 もう飛んで行きそう」と家族で一喜一憂。 久美子さんは 「巣立ちは必要ですからね」と言いながらも思いは複雑のよう。
最近はある大学の研究者の論文などにより、 スズメの個体数の減少などが報告されている。 日本野鳥の会県支部幹事で、 海南市ビオトープ孟子理事の有本智さん (45) によると、 主食を米とするスズメの出現は、 稲作文化と大いに関係するという学者もいるという。 日本では田んぼのある環境が減っており、 加えて瓦を使った家が少なくなったことで全国的に減少傾向にあるとし、 「そうした場所に巣を作るのは大変珍しい事例ではあるが、 最近の住宅事情から、 今後増えてくるのではないか」 と話している。
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