福島から避難の佐藤さんに毎週、野菜直送便


届けられた野菜を手に勉さん㊨と妻の和子さん

 ジャガイモやタマネギ、キャベツやトマト。東日本大震災と原発事故で、被害を受けた福島県富岡町から和歌山市に避難している佐藤勉さん(67)のもとには毎週月曜日、段ボール箱いっぱいに新鮮な野菜が届く。野菜は紀の川市の農家の男性(77)から無償で提供されたもので、その回数は50回を数えた。佐藤さんは「全く知らない土地に来て、これほどありがたいことはない」と話している。

 昨年5月ごろ、 福島県から避難してきた佐藤さんのことを新聞で知った男性から、 佐藤さんのもとに 「農家をしているので、 ぜひ作った野菜を食べてください」 と電話があった。

 その後、 佐藤さんは、 和歌山市などの店舗に野菜を卸していた男性から市内の指定された場所に向かい、 置かれた箱いっぱいの野菜に感動。 そこには十数種類が詰められ 「震災に負けず、 強く生きろと言ってくれているようで元気づけられた」 と振り返る。

 以来、 毎週月曜の朝に野菜を届けた男性からの電話を受け、 佐藤さんがその場所に取りに行くということが続くようになった。

 野菜は、 減農薬で有機栽培で育てられたもの。 シシトウやオクラ、 ナスやインゲンなど、 さまざま。 時には、 見たこともないような珍しいものもあり、 佐藤さんは 「わが家では野菜を買うことはなくなりました」 と笑顔。

 福島の自宅は福島第一原発から近いため、 立ち入りが制限され、 震災後自宅に戻ることができたのは1度だけという。

 福島県剣道道場連盟の会長で、 今も和歌山の子どもたちに剣道を教えている佐藤さんは、 後にその男性も剣道の元指導者だったことを知った。 佐藤さんは 「剣道の教えである 『交剣知愛』 の言葉のもとに、 力になってくれたのかも」 と感謝。 これまで毎回、 礼状を欠かすことなく送り続けている。

 男性は 「避難してきた和歌山で不自由されないよう、 野菜で元気になってもらえれば。 喜んでいただけたら、 それで十分です」 と話している。

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