正社員へ「もっとチャンスを」 若者の声聞く


今後の予定をチェックする若者の女性

 アベノミクスで景気回復に沸く社会だが、これまで長引いた不況により若者の雇用環境は依然として厳しい状況だ。厚生労働省によると、全国で昨年のフリーターは180万人。平成15年に217万人とピークに達し、その後は減少したが、今も170万~180万人台で推移している。15~34歳で仕事も学業もしていない若者(ニート)は昨年63万人と過去10年ほど、ほぼ横ばいで推移している。県内の働くことに悩む男女若者2人の心の叫びを聞いた。

 和歌山市手平の祖父母宅で暮らす男性(30)はもう3年も仕事に就いておらず無職の状態。社会に向けて「トライアル雇用など充実させて、もっとチャンスを与えてほしい」と強く訴える。

 身長175㌢でがっしりした体格だが、おとなしい性格。奈良県の私大を卒業して一度、医療系の会社に就職したが、仕事が合わず4カ月で退職した。その後は、派遣会社などを通じて、工場で検品や仕分け、梱包など短期の派遣労働しかなかった。「この生活から抜け出したいと思い、頑張って就職活動をしたが採用されなかった」とし「自分も安定した職場で働きたい」とつぶやいた。

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 和歌山市布引のアパートで一人暮らしする女性(23)は、新卒採用から約1年勤めた中堅運輸倉庫事務の職場を辞めた。今の若年者就労環境について「職場からドロップアウトした際の受け皿がない。正社員から外れたら多くがフリーターになってしまう社会を変えてほしい」と主張する。

 青森の進学校から国立大学を卒業。旅行で訪れた本県を気に入り、とにかく県内で就職したいと就活し、採用を勝ち取った。しかし、会社に入ると、単調な仕事の毎日に目標を見いだせなくなった。「学生時代はやればれるほど結果が出たが、職場で認められることはなかった」と振り返る。今後は会社組織の所属を諦め、ウェブデザイン系の技術を学び自営の道を歩む計画。

 現在の大学生が置かれる厳しい就職戦線に「どこでもいいから会社に入ればいいという就職活動の雰囲気は異常」とし「大学側も学生に向く職種などをもっと指導しなければ若者は職場で定着できないのではないか」と指摘した。

 【記者メモ】厚労省によると、昨年の25~34歳の若者の完全失業率は5・5%と全体の失業率4・3%を上回っている。フリーター(180万人)の年齢は、25~34歳が15~24歳よりも多い。フリーターから正社員への転職状況はフリーター期間が半年以内の場合、男性で約7割、女性で約6割が正社員になれたが、フリーター期間が3年を超える場合、男性が約6割、女性が約4割しか正社員になれず、フリーター期間が長いと正社員になることが厳しくなることが分かっている。

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