2010年01月21日

04.文化・くらし

写真、コーヒー、わがふるさと

写真展 「ザ・みかづら」

「みなさんのおかげです」 と金谷さん

笑顔でおいしいコーヒーをいれてくれる喫茶店「安堵」(和歌山市三葛)のマスター金谷幸明さん(77)は、 高校以来の大の写真好き。 地元アマチュアカメラマンらの月替わりの写真展を12年間欠かさずに開く。 紀の川市や岩出市、 海南市から来るファンも多く、 「家庭的で居心地がいいんですよ」 「マスターの人柄だね」 とくつろぐ人、 写真談義に花を咲かせる人の姿が絶えない。

写真展は、 個展、 グループ展、 親子や兄妹展とさまざまだが、 毎年1月に開くのが、 自身のアイデアで始めた写真展 「ザ・みかづら」 だ。 被写体は和歌山市三葛地区限定。 撮影者も三葛在住・在勤者 (安堵通勤者も?) 限定。 毎回、 地元ならではの愛情あふれる多彩な作品が並ぶ。

写真展 「ザ・みかづら」
店の看板にもしている作品に自作の粋な短歌を添えて

忙しくてなかなか写真を撮れないが、 周りにも勧められ、 この 「ザ・みかづら」 には必ず1、 2点を出品する。 フィルムにこだわり、 愛機ニコンで写したことしの作品は紅葉の名草山の上に広がる空。 「写真には写す人の性格が出るんですよ。 私はセンチメンタルと言われます」 とはにかむ。

生まれも育ちも三葛。 喫茶店は29年前、 脱サラして開いた。 写真ギャラリーにしたきっかけは、 自分が写真を勧めた客が賞をとり、 その人の写真展を開いたこと。

きっかけになったその人物南方正明さん (61) は、 「マスターは物知り。 写真に限らず歴史も詳しいし、 漢詩や俳句、 短歌もつくる。 話を聞かせてもらうと参考になることが多い。 そんなマスターに引かれてみんな来るんです」 と話す。

そのそばでマスターは 「私はお調子者で」 と笑いながら、 「60歳過ぎたころ、 何のために生きているのか、 何か残せないかと思うようになって...」。 学徒動員も経験し、 詠んだ短歌 「わだつみよ昭和も遠くなりにけり青春散華雲流るる果て」 は新聞にも掲載された。

そして、 三葛の風景や風俗を記録し残したいという強い思い。 写真だけでなく、 南方さんが長年撮影し続けているビデオも店内で放映する。 「まちも人も年々変わっていく。 東京へ行った人たちも、 故郷の光景に喜んでくれるから」 と。

神社仏閣、 道端のお地蔵様、 古い塀が残る路地、 天候・時刻・季節により刻々と表情を変える自然、 木々や花々、 虫たち、 夏祭りや秋祭り、 歩く人や祈る人、 遠景でもアップでも、 その瞬間にしかないみかづらがある。 「なんぼでも写すものはあります」 。

特に大好きなのは 「名草山」 という。 「ここ(店の前)から見ても和歌浦から見ても、 どっから見てもいい。 わがふるさとやから...」。 故郷と写真への熱く優しい思いが、 きょうも人を店へと誘う。





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