2010年05月20日

00.社会/04.文化・くらし

20年間集め続けた960点、田中さんが近代美術館に寄贈

大阪教育大学名誉教授の田中恒子さん

寄贈作品の一つ奈良美智の《どんまいQちゃん》に「久しぶり!」と声を掛ける田中さん (同館展示会場で)

京都市に住む大阪教育大学名誉教授の田中恒子さん(69)がこのほど、20年かけて収集した現代美術のコレクション960点を和歌山市吹上の県立近代美術館(雪山行二館長)に寄贈した。 日本の現代美術の動向を反映した質量とも優れたもので、 作家は村上隆など128人におよぶ。 田中さんは、「現代美術は現在進行形の文化財。 コレクションは作家からの預かりものと思っていました。 公的施設に作家と作品を守ってもらえるようになり、ほっとしています」と話している。

寄贈したのは、 昨年9月8日から11月8日まで同館で開かれた 「自宅から美術館へ 田中恒子コレクション展」 で紹介された作品すべて。 田中さんが画廊で 「面白い」 と感動して購入、 自宅の玄関や居間などに飾っていたもので、 名和晃平など現在高い評価を得ている作家の第一作や初期の作品が多い。

田中さんは住居学の研究者だが、 小さいころからの美術好き。 21年前に東京の画廊で彦坂尚嘉の版画を購入して以来、 「自宅で一緒に暮らすとわくわくする」 「生活が不安定な若い作家を少しでも後押ししたい」 「自分で発見する喜びがある」 と収集を続け、 作家たちから母のように慕われてきた。

しかし次第に、 社会的責任と地震や火事など災害への不安を感じ、 「空間が現代美術に合う、 常の企画展が現代美術を大切にしている、 関西の現代美術に詳しい学芸員がいる」 との理由で、 同館を寄贈先に決めたという。

19日、 雪山館長は、同館を訪れた田中さんに仁坂吉伸知事からの感謝状を手渡し、「本当にうれしくありがたい。 コレクションは田中さんの歩み、 生き方を示すもの。 創作活動と収集活動は芸術を生み出す車の両輪と改めて感じます」 と感謝。 田中さんは 「寂しさもありますが、 安心感と皆さんに見ていただけるうれしさの方が強いです」 と話した。

現在、 寄贈コレクションから奈良美智の《どんまいQちゃん》、 今村源の《あわシダI》、 藤浩志の《ヤセ犬》が、 「ようこそ 彫刻の森へ」 展で展示されている。





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