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実業家・新田長次郎が造営した海南市船尾の琴ノ浦温山荘園の建造物が4月、 国重要文化財として答申された。 その一つ 「主屋」 は、 国指定名勝の雄大な庭園を、 三方から見渡せるよう作られている。 長次郎 (1857~1936) が楽しんだ主屋 (現在非公開) からの美しい庭園の景色と、 部屋のおしゃれな意匠を2回に分けて紹介する。
増築した長次郎の居室から見える風景
主屋は大正4年の上棟。 玄関を入って左に二間続きの和室があるが、 ここは実は大正後期に増築されたものだ。
大正9年。 心にゆとりがもてるようにと景観を大事にしていた長次郎は、 主屋の南側に自然の山に池、 石の庭園を造営。 後に東側に人工石を用いた庭園を造った。 長次郎は、 この東側の庭園を見渡したいと、 部屋を増築したのである。
その部屋からは、 広大な池と赤松などの庭木が見え、 池の対岸正面には茶室が見える。 手前には人工石の庭石や飛び石。 発明家だった長次郎は、 先駆的な建築技術に興味があったのだろう。 当時最新の建築資材だったコンクリートで庭石などを作った。 庭に連なる石組みは大きな高低差を巧みにつないでおり、 園庭の見どころでもある。
居室は書院造りを取り入れた床、 襖引手に七宝焼を取り入れている。 違い棚には、 筆返しと呼ばれる手法を使い、 あまり見かけない一枚板で筆留めを造っているのも見どころだ。
次回は主屋奥の主座敷からの眺望と見どころを紹介します。
畳の上に置かれた洋風のいす
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