2010年10月05日

04.文化・くらし

日本板画院同人の谷井照夫さんが米寿記念展

日本板画院同人の谷井 照夫さん=和歌山市松ヶ丘

「万トンの水を支えて」(1999)と谷井さん

木版画歴約50年。 米寿記念展を6日からギャラリーけまりで開く。 「今までと違う展覧会にしたい。 新旧の作品を並べ、 皆さんと版画の特質や、 主題を大切にする心と表現について語り合いたい」 とにこやかに話す。
テーマは 「版画は彫るな」 (!?)。 「いや、 むやみに彫るな、 彫り過ぎるなという意味ですよ」 と笑顔で。 画面の4分の3をも占める作品 「御堂」 の黒や作品 「雪」 の白は、 一切彫っていない。 その黒の中から、 多くの灯籠 (とうろう) がつるされた御堂の天井の高さ厳かさが、 白からは降り積もった雪の静けさ重さが伝わってくる。
「周りを彫ることで、 彫ってないところに意味を持たせることができる。 何があるか見る人が想像する。 そこが版画の魅力であり愉快なところです」。

きっかけは、 棟方志功とともに日本板画院を支えた版画家、 故・長谷川富三郎氏との出会い。 担任していた学級 (小学校) の子どもたちの版画を見てもらうと、 何かを感じてくれたのか、 長谷川氏に 「あなたの作品を見せてください」 と言われた。 「私は作っていません」 と答えると、 「あなたもやりなさい。 東京へ出しなさい」。
そして初出品 (昭和50年の第25回板院展) で 「準日本板画院賞」 を受賞。 以来数々の賞をとり、 昨年の第59回では長谷川富三郎賞 (棟方志功賞に次ぐ) を受賞した。 「お世話になった先生の名の賞は本当にうれしかった。 記念展では、 先生からの手紙や朱の入った下絵など思い出の品々も紹介したい」 と話す。

郷愁誘う古民家や町並み、 雄大な風景が好きだ。 絵になる風景を求め、 奥さんと車で全国を走った。 ニュースで雪が降ったと知ると、 仕事を終えた土曜の午後に出発した。 「万トンの水を支えて」 (大台ヶ原、 池原ダム) は構図を決めるため3年通った。 巨大な堰 (せき) に人間の素晴らしい営みを感じたという。
「長谷川先生は、 『描き始めてから完成するまで、 持ち続けられるような感動。 これが主題だ』 とよく言われました。 主題を表現するために題材や構図や色彩があるのです」。 傘寿の際に記した思いは今も変わらない。
「原画を決めるのに頭を使い、 彫る仕事で指先を、 摺(す)る仕事で全身運動...長生きは版画のおかげです。 そして大切なのは人の和です」。
(千)
米寿記念 木版画作品展6~11日午前10時~午後5時。
会場は和歌山市九番丁のギャラリーけまり (TEL0734323000)。





この記事と関連がありそうな過去の記事

powered by weblio


04.文化・くらし - 同カテゴリの記事






カテゴリー
社会
事件・事故
政治・経済
スポーツ
文化・くらし
紀の川・岩出・海南・紀美野

これまでの特集
月別アーカイブ
株式会社 和歌山新報社
cypress.gif