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「雲が厚くて見えませんでしたが」 と初日の出のスケッチを手にする中尾さん |
「美しい和歌の浦を再発見してもらえたら」と、 和歌山市三葛の洋画家中尾安希さん(69)が16年前から実施している「初日の出を見る会描く会」が、 ことしも1月1日早朝に開かれた。 曇り空にもかかわらず約50人が参加。 スケッチしたり撮影したり、 和歌を詠んだり拝んだりと思い思いに初日の出を見つめた。 和歌の浦を愛し続け、 昨年8月の国名勝指定を喜ぶ中尾さんに思いを聞いた。
元日の太陽は7時15分ごろ、 名草山が生石山の方へ連なるあたりに顔を出す。 干潟をはさんだあしべ橋周辺から眺めると、 風もなく穏やかな朝は日の出がそのまま水面に映え、 曇りの朝は雲と太陽が空に美しい模様を織りなす。 それらが刻一刻と変わっていくさまが素晴らしい。
そして対岸の建物は、 逆光と朝もやに包まれて目立たない。 中尾さんは 「ちょうど万葉の景色とも思える風情です。 万葉の風景が残っているのは全国的にも少ない」 と話す。
武者小路実篤の言葉 「美を広める」 を座右の銘に、 和歌の浦の早朝を歩く会や展覧会の開催、 画集や絵はがきの出版、 麦の郷や妹背山護持顕彰会基金への寄付、 小中学校での講演などを続けてきた。 故・平山郁夫さんの 「絵かきは絵を描くだけでなく、 社会とのつながりをつくっていかねばならない」 と同じ思いという。
今後の 「和歌の浦」 について中尾さんは、 《対岸の風景》と《風土に合う色》の重要性を挙げる。
「対岸の建築規制が必要。 また、 拡幅工事をしている明和中からマリーナへ向かう道路の陸側に松を植えてほしい。 建物の目隠しにもなる」 とし、 建物の高さや色、 看板の大きさや色の問題は、 和歌山城などまち全体の問題だと指摘する。
そしてもう一つの希望は石泉閣の再利用だ。 「あのままつぶしてしまうのはしのびない」 と話している。
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