スペインのジョアナさん 海南で漆工の修行中


山田さん㊧から造形について学ぶジョアナさん

 質問があれば辞書を指差し、講師の教えは熱心にメモを取る。スペインから、会社員、Joana Vilalta Raspau(ジョアナ・ヴィラルタ・ラスパウ)さん(49)が漆工の技術を学ぼうと、山田漆工房(海南市岡田、山田健二代表)を訪れている。母国で指導するのが目標で、住み込みで約2カ月間学ぶという。

 ジョアナさんは、27歳の時にスペイン・バルセロナの美術学校に入学した。その際、漆塗りに出合い、「とても優しい雰囲気に引力があった」といい、漆工科を専攻、3年間通った。

 その後も、カルチャースクールに通うなどしていたが、1996年に石川県金沢市に旅行した際、輪島塗りを見学し、「自分がしている物とのレベルの違いに、ショックを受けた」。これを境に、漆工から遠ざかっていたという。

 長男(25)が手元から離れたこともあり、あらためて本場・海南市で漆工芸を学ぶことを熱望し、薬局関係の仕事以外にアルバイトなどで資金をためたという。

 スペインの美術学校で数回に渡って漆工の講師をしていた山田さん(79)は、通訳の日本人男性と手紙で交流をしており、ジョアナさんの熱意を知らされ、受け入れを決めたという。

 同工房では、朝と夜に生徒が学んでおり、ジョアナさんは常に同席。生徒のいない時間帯も、黙々と自習を重ねているという。日本語や英語の語学力はあいさつ程度のため、ジョアナさんは辞書を手放さず、何かあれば書き出し、身振り手振りで説明する。同工房に通うジョアナさんと同世代の女性が、日常会話で使うスペイン語の意味を書いた表を作るなど、生徒も友好的に協力している。

 山田さんは「学校で漆工を学んで基礎ができているから、技術自体は見て理解してくれる。『何のためにその工程がいるのか』を説明するのに、一生懸命単語をつないで話し、判読してもらってる」と話す。

 スペインでは、漆がかぶれるなどという理由から、愛好家が減少しつつあるという。ジョアナさんは現在、漆を塗り、専用の道具で削って金箔(きんぱく)で埋める「沈金彫り」の技術を習得しようと、日々練習している。

 ジョアナさんは「漆塗りを初めて見た時から、その繊細さに心を奪われた。技術を体得するのは難しいけれど、スペインで漆工が絶えないよう、魅力を広めていきたい」と話している。

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