呼吸でパソコン操作 世界初のマウス開発

呼気マウスでパソコン操作する大学院生と北山准教授
呼気マウスでパソコン操作する大学院生と北山准教授

 体を動かすことができない重度障害者も、呼吸のみで上下左右、自由にパソコンのカーソル操作などを可能にする世界初の「呼気マウス」を、近畿大学生物理工学部(紀の川市)人間工学科の北山一郎准教授らが開発した。USB接続できる全パソコンに対応。重度障害者らの支援へ、健常者と同じようにパソコン操作ができる画期的な装置として注目を浴びている。

 工業用流量センサーを応用した。センサーからの信号を変換機が読み取り、パソコンに指示を与える。「吸う」「吹く」と強弱を使い分けて、上下左右の動きを実現した。

 短く1回吹けば左クリック、短く2回吹けば左ダブルクリック、短く1回吸えば右クリックできる。また、吹き続けたり、吸い続けたりすることで、画面の隅から隅までマウスポインタを移動させることができる。

 OS付属のスクリーンキーボードを表示すれば、文字入力も可能だ。これらの操作は、利用者に合わせて空気の流量や入力内容を変更できる。

 これまで重度障害者がパソコン操作する場合は、口にくわえた棒でタッチパネル画面に触れるなどする必要があった。呼気装置もあったが、電源のオンオフなど簡単な操作だけだったという。

 今回の装置開発で、パソコンから離れていたり、横に寝た状態でも操作できるようになった。今後は、来年上旬をめどにスクロール操作の実現を目指す。また将来的には、ドラッグ&ドロップ操作も行えるように技術開発を進める。

 ことし9月、ポルトガルの福祉工学系の学会で、研究成果を世界の研究者たちの前で発表した。北山准教授は「今後、実際に障害者の方に実証実験してもらうとともに、寝たきり高齢者の方にも使ってもらえるよう、さらに改善していきたい」と話している。

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 同研究は、同科の中川秀夫准教授との共同チームによる介助ロボット開発の中で、ロボットに指示を与える技術として生まれた。最終的には、頸椎損傷や筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した重度障害者を支援する半自立型ロボットの開発を目指している。

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