ラジオでテレワーク バナナFMが1人放送

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、自宅で仕事をする「テレワーク」への切り替えが全国の事業所で進む中、和歌山県和歌山市のエフエム和歌山(バナナFM、山口昭昌理事長)は、パーソナリティーが自宅から1人で生放送を行う取り組みをスタート。災害発生時などに緊急の情報を住民に伝え続けることにつながる活動で、全国的にも珍しいという。

コロナ禍を受け、出演者が自宅から放送に参加する方式はテレビ・ラジオ各局で採用しているが、バナナFMが始めたのは、業界用語で「完パケ(完全なパッケージ)」と呼ばれるもの。トークはもちろん、CMの切り替え、リクエストへの対応、ニュース放送など全て1人で行う。

人気パーソナリティーの宇和千夏さんが取り組んでおり、和歌山市内の自宅の一室には、同局の放送機材一式がセットされている。

「全国ニュースも地元のニュースもここから放送できるようにしました。メールやリクエストに応えて、曲もここでかけています」と山口理事長。「洪水や地震など災害があったときには、いち早く情報をお知らせできます」と話す。

完パケは、宇和さんが担当する生放送番組「ランチブレイク・ラジオと一緒」の金曜日の放送で行っており、4月3日に開始。本来は午前11時~午後1時の2時間枠だが、続く1時間番組がリスナー参加型で休止中のため、計3時間の生放送となっている。

完パケ開始2回目の10日、本紙は自宅「プリンセス・スタジオ」から生放送中の宇和さんを訪ね、取材の様子はそのまま中継された。

番組の音声からは、普段のスタジオからの放送との違いは感じられない。

災害時には、ラジオから流れる人の声が励みになったという被災者の体験が知られている。感染防止対策で人との接触を8割減らすことが求められ、外出できない人も多い中、宇和さんには、声を通じて安心感を届けたい思いがある。「ラジオを家にいらっしゃる時のお供にしていただけたらうれしいですね」。

初挑戦の3日の放送は、1人で番組の全てをこなす緊張感から、3時間ずっと部屋から動けない状況だったとのこと。「一つの放送をするためにたくさんのスタッフが動いていること、他の人たちが支えてくれていることを、ここで放送してより感じました」と振り返る。

バナナFMは、24時間いつでも活動可能な人工知能アナウンサー「ナナコ」を備えているが、緊急の際には「それに加え、生でいち早く届けることがこの場所からでもできたらいいなと思う」と宇和さん。臨機応変に対応できるように、今後も当面、金曜日の同番組は自宅スタジオから放送する。

リスナーに元気とくつろぎの時間を届ける宇和さん

リスナーに元気とくつろぎの時間を届ける宇和さん