2010年08月03日

04.文化・くらし

国名勝・重要文化財「琴ノ浦温山荘園」⑥、潮の満ち引きで変わる景観美

温山荘園の建造物

迫力ある一枚岩の石橋

海南市船尾の琴の浦温山荘園の建造物 (主屋・茶室・浜座敷) が6月29日に、 国重要文化財として正式に認定された。 庭園はことし2月22日、 国指定名勝に指定されている。 今回は、 発明家故新田長次郎 (1857~1936) の莫大な財力が庭園内に形として記される石橋などを紹介する。

主屋の西側には、 南北方向に細長く屈曲させながら複雑な形状をした 「心字池 (しんじいけ)」 がある。

池の南側には巨大な一枚石の橋が架かる。 長さ約9メートル、 幅2・2メートルの紀州青石で、 見る人を圧倒する。 石橋の基礎は、 荷重を考慮して煉瓦積みとなっており、 材料的にも抜きんでて優れている。

もう一つ、 際立つのは、 池の中央部に設けられた沢渡り。 こちらも紀州青石を豪快に使用している。 踏止石には花崗岩の平石を使い、 青石との色彩上の対比が特徴だ。

主屋側から橋を渡ると矢ノ島がそびえる。 矢ノ島のトンネルは大正4年に開削。 海からの風を送り込むために手掘りで造られたという。 プライベートビーチとして長次郎が楽しんだ海も、 いまは面影がなく残念。

この心字池は、 主屋側 (東岸) と矢ノ島側 (西岸) で景色が違うのも見どころだ。 東岸は紀州青石をふんだんに用いて護岸とし、 豪華で色彩豊か。 一方、 西側はむき出しとなった自然岩盤を護岸として活用し、 潮の満ち引きにより景観そのものが変わるようになっている。 池の背景を矢ノ島の緑で形成し、 景観がより一層映えるとされている。
温山荘園の建造物
沢渡りも魅力溢れる (写真:琴の浦温山荘園調査報告書より)





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