四十数年ぶり復活 和歌祭の餅搗(もちつき)唄


小鼓のプロに教えてもらいながら練習に励むメンバー(東照宮会館で)

 来年390周年を迎える和歌祭の「餅搗踊(もちつきおどり)」に、唄とお囃子(はやし)が四十数年ぶりに復活しそうだ。ことし県文化遺産課の蘇理(そり)剛志さん(35)が音源を発見したのがきっかけで、同踊の株である松井瑛雄(てるお)さん(83)や寺本享央(あきひさ)さん(44)らと練習に励んでいる。長年掛け声を担当してきた松井さんは、「今まで無声映画みたいだったから、うれしいしありがたい」と笑顔。唄は来年1月15日の「和歌祭390周年祭プレイベント」で初披露される。

 餅搗踊は元和8年(1622)の和歌祭創始時からある練り物で、きねや臼を持った少女らが華やかな着物姿で練り歩く。古い祭礼図には笛と締太鼓(しめだいこ)、小鼓、鉦(かね)が描かれているが、松井さんが参加し始めた昭和45年ごろには、唄もお囃子もなく、掛け声に合わせて締太鼓を打つだけになっていた。

 見つかった音源は、昭和33年に宝塚歌劇団郷土芸能研究会が録音したもの(阪急文化財団池田文庫所蔵)。和歌山城天守閣再建を祝う替え歌になっていた。蘇理さんはそのメロディーを譜面に書き起こし、戦乱が収まった時代に生まれためでたさを歌う、本来の歌詞を組み合わせた。

 練習は10月から始まり、4日は同市の邦楽演奏家・藤舎呂鳳さん(72)と杵屋多佳さん(59)が小鼓の打ち方やひもの通し方などを指導。小鼓の寺本さんと進藤頼彦さん(44)、松井さん、笛の松原文さん(43)、唄の蘇理さんが熱心に音やリズムを合わせた。

 和歌祭参加も和楽器に触れるのも初めてという進藤さんも実に楽しげ。メンバーはさらに仲間を募っているという。

 蘇理さんは「人のつながりがあってできたこと。もし餅搗唄に関わった人をご存じでしたら教えていただきたい。華やかなお囃子と唄が復活すれば、和歌祭をより喜んでもらえる」。さらに「餅搗唄は粋でみやび。ぜひプレイベントで楽しんでください」と話している。

 プレイベント(市など主催)は市民会館小ホールで午後1時から。入場無料。さまざまな演舞の他、昭和10年の和歌祭映像の上映、講演、写真展、体験コーナー、お菓子のサービスなどがある。問い合わせは同館(℡073・432・1212)。

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