世界農業遺産に みなべ・田辺の梅システム

和歌山の「みなべ・田辺の梅システム」が15日、国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」に認定された。養分に乏しい山の斜面を活用し、高品質な梅を生産する和歌山の伝統的な農業技術が世界的に認められたかたち。仁坂吉伸知事は「大変うれしい。県として誇れるものがまた一つ増えた」と喜んでいる。

認定に向けては平成26年、みなべ町長を会長、田辺市長を副会長とする「みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会」を立ち上げ、現地調査などが進められてきた。15日は、認定の可否を審議するFAO本部の委員会がイタリア・ローマで開かれ、仁坂吉伸知事が英語で最終プレゼンテーションを行った。

今回、和歌山と同時に申請していた宮崎、岐阜の両県も認定され、認定地域は15カ国36地域(国内は8地域)になった。県農林水産総務課によると、認定によって地域が世界に発信され、観光客の増加や、地元の意識の高まりによる生産振興、海外で農産物を販売する際の付加価値などにつながるとしている。

仁坂知事は「この認定を契機に、県もみなべ・田辺地域の皆さんと一緒になって『梅システム』の素晴らしさと『梅』という健康に有用な作物を世界に向けて発信し、梅の消費拡大や国内外からの観光客誘致など、地域の活性化につなげていきたい」。小谷芳正みなべ町長は「先人が発展させてきた、まさに遺産と呼ぶべきものが世界的に認められ、また南高梅誕生50周年を迎えた年に認定されたことは大変うれしい。今後はこの遺産を後世にどう伝えていくか、認定をどう生かしていくかが大事」。真砂充敏田辺市長は「梅をはじめとした農産物のブランド化や産業観光の振興など、地域活性化と持続的な農業モデルの発展につながることを期待している」と、それぞれ関係者の努力への感謝とともにコメントしている。

同システムは、みなべ・田辺地域で約400年にわたり引き継がれてきた梅生産手法。里山の斜面を梅林として活用し、その周辺に薪炭林を残すことで水源涵養(かんよう)や崩落防止の機能を持たせている。薪炭林にすむニホンミツバチと梅の共生など、地域資源を有効に活用しており、里山の景観、生物多様性の保全などにもつながっている。

世界農業遺産は、FAOが2002年に開始したプログラム。伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化、景観、生物多様性に富んだ、世界的に重要な地域を次世代に継承することを目的とする。

16日朝には、県庁前に認定を祝う看板(縦1・5㍍×横12㍍)が掲示され、通行人やドライバーの目を引いた。

認定を祝い県庁前に掲示された看板

認定を祝い県庁前に掲示された看板

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