距離や関係見つめ直す 近代美術館で「疎密考」

新型コロナウイルスの感染拡大で空間や人との距離を意識する機会が増える中、和歌山市吹上の県立近代美術館で30日まで、空間をテーマにした企画展「疎密考」が開かれている。

隙間がなく、ぎっしりと詰まった「密」、余白や間の多い「疎」を感じさせる絵画や立体、写真など65作家の84点を展示。

このうち、木村太陽の「+-People」は、紙粘土で作られた13体の小さな人形。磁力によって動かせ、近づいたり離れたりしてコロナ禍での人同士の微妙な距離感を思わせる。

孫雅由の「空間の間合いAC95―15」は、青色の大画面にリズミカルで伸びやかな線が自由に踊る。また、コロナ収束への願いを込め、招き猫などの縁起物を題材にマスクの形に仕上げた刺しゅう作品も並ぶ。

その他、自然の中で一人たたずむ静寂感のある風景の版画、木陰でまどろむように過ごす2人や、呼吸の合った音楽の演奏シーンを表現した絵画、「間」が一定ではないオルゴール作品も紹介。物理的な距離に限らず、時間的、心理的な「間合い」の意味や、人と人、人と空間の関係性を見つめ直すような内容になっている。

同館の藤本真名美学芸員は「コロナ前に比べて、感化されることや捉え方も変わってきたのではと思います。心地よい間合いについて考えるきっかけになれば」と話している。

月曜休館。学芸員によるフロアレクチャー(展示解説)は29日午後2時から。30日午後2時から、同館前(屋外)でコンサート「クラシック音楽と疎密」を開催予定(変更の可能性あり。事前にホームページで確認を)。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。

 

マスクをかたどった刺しゅう作品

 

緻密な表現の彫刻などが並ぶ

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