「全自動染色システム」でニーズに対応 吉田染工


巻いた糸がむら無く染まる(吉田社長㊧)

 年々、事業所が全国的に減少している染色業。紀の川市貴志川町前田の〓田染工㈱(〓田篤生社長)は、24時間稼働の「全自動染色システム」を備え、取引先の細かなニーズに対応。国内外に向けて自社の技術を伝えようと、さまざまな研究開発に取り組んでいる。吉田社長は「今まで蓄積した経験と技術を生かし、客の要望に対し、さまざまな提案をしていきたい」と話している。

 同社は約23年前、高品質、小ロット、短納期といった取引先のニーズに対応しようと、ロール状に巻いた糸を釜に投入し、染色から乾燥までを自動で行う「全自動染色システム」を導入した。このシステムは、給水、排水、薬品投入などを自動化しているので、24時間連続で染色機を稼働することができる。また、染色データはコンピューター内で蓄積・制御できるので常に同じ色を再現できるのが特徴だ。

 吉田社長は「高度成長期に、最新の技術を探求しつつ、働きやすい繊維工場を作ろうという気持ちがあった」と振り返る。

 同じ敷地内にあるグループ会社、貴志川工業㈱は生地に色と同時に光沢、香を付ける加工の技術を誇る。先染めと後染めの全ての工程を自社内で完結できる染工場は全国でも珍しいという。

 おととし、米・ニューヨークでの展示会で和歌山の梅酒を包むため、梅の香りがするスカーフを作ってほしいと依頼を受けた。カプセル化した天然オイルを生地の表面に独自の技術で固着させる。肌が触れるとカプセルが割れて、香りを発するという仕組みで、加工技術の一つとして約10年前から試験的に行っていた。

 昨年、世界最高峰の生地見本市「プルミエール・ビジョン・パリ」にも地元企業のブース内で参加。自社の技術をバイヤーらにPRした。

 また、教育の一環として、小学生に自分たちで育てた綿が、製品になるまでの工程を伝え、地場産業を知ってもらう取り組みも行っている。「これからも和歌山らしさを出せる商品に取り組んでいきたい。子どもたちにも地場産業を身近に感じてもらうことで染工のすそのを広げ、異業種とのコラボなども展開していけるといいな」と笑顔を見せている。

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