楕円で不思議な空間 県文化奨励賞受賞の湯川さん

湯川雅紀さん
アトリエで作品 「spur」 ㊧と湯川さん

 透明感のある楕円(だえん)や不透明の楕円が多層的に重なり合った不思議な絵画空間。 楕円は舞い踊るようにも、 画面の中から飛び出してくるようにも見え、 前に立つと、 体が楕円の動きの中に包まれるようにも感じる。

 30歳で 「VOCA賞」 (※)を受賞して一躍注目を浴び、 国内外で高く評価されてきた。 平成20年に海南市文化奨励賞受賞。 23年に本年度の県文化奨励賞を受賞。

 作品は、 東京国立近代美術館▽東京都現代美術館▽練馬区立美術館▽横浜美術館▽カスヤの森現代美術館▽第一生命保険相互会社▽独日センタービル (ドイツ・デュッセルドルフ)、 そして和歌山県立近代美術館に収蔵されている。

 海南市に生まれ、 和歌山大学教育学部を卒業。 大阪教育大学大学院美術教育専攻を修了し、 現代美術の中心地ドイツへ。 国立デュッセルドルフ芸術大学芸術学科で本格的に絵を学び始めた。 試行錯誤の4年間だったという。

 「絵を描くということは、 現実を見て、 自分が何を選びとって、 どういうふうに表現したかというプロセス。 抽象でも、 自然や現実をしっかり見ていかないと描けない。 自然には完璧に美しいものがある。 例えばスズメバチの巣など。 でも、 それをまねてもしょうがない。 絵画としてそれに匹敵するものを生み出さないと」

 植物細胞や腔腸(こうちょう)動物の構造から想を得、 円板が、 らせん状につながった形を描き始めた。

 誠実な話しぶり同様、 誠実に真摯(しんし)に考え抜かれた作品は常に進化を続け、 楕円が重なり合う空間は時に格子で隠され、 時に輪郭線だけの楕円で仕切られる。 しかし、 「空間に対する意識、 作品の本質は変わらない」 と話す。

 一昨年、 ドイツから海南市重根にアトリエを移した。 「色が鮮やかになった? 和歌山の自然の生命力を感じるからかも」 とにこやかに。
 そして、 「応援してくださる方々がいるのはありがたい。 ドイツ時代からの 人の縁を感じます。 いろんな展覧会に呼ばれるようになりたいですね。 多くの人に作品を見てもらいたいですから」。

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