「いじめ」から子どもを守る 県教委調査を解消への一歩に

浮島 智子

 今月10日、和歌山県教育委員会が平成24年度の県内の小中高校と特別支援学校における「いじめ」認知件数が2356件にのぼり、前年度の97件から約24倍に大幅に増加したことを明らかにしました。一方、「いじめ」解消率も前年度の75・5%から95・8%に増えていました。件数が大幅に増えたことは、それまで「いじめ」とは捉えられていなかったケースが「いじめ」と認識されるようになったことが大きな要因だと思います。県や学校、保護者、PTA、地域などが取り組みを強化した結果であり、「いじめ」解消への第一歩として真摯に受け止めるべきだと思います。

 取り組みの背景には、一昨年10月に滋賀県大津市で「いじめ」を受けた中学2年の男子生徒が自殺した事件で、昨年7月、被害者の男子生徒が「自殺の練習」をさせられていたことが報道されて、あらためて「いじめ」問題が大きく社会問題化したことがあります。これを受けて県は緊急に「いじめ問題の実態把握アンケート」を実施し、「いじめ問題対応マニュアル」「いじめ問題対応ハンドブック」を1万3000冊作成して全教職員に、知事・県教育長へのメールアドレスを記載した携帯カードをすべての児童生徒に配布し、保護者用チラシも配りました。アンケートに記入された事例については個別に事実確認を行ったとされています。

 先月、和歌山大学で開催された「関西教育学会第65回大会公開シンポジウム」で、教育評論家の尾木直樹さんは「人権の尊重が重要であり、子どもが相手の気持ちが分かる人間になるように教育しよう」と話され、また尾木先生と一緒に大津市いじめ問題第三者委員会の委員を務めた松浦善満和歌山大学教授も、「『いじめ』の概念は、からかいから犯罪まで範囲が広い問題行動で特定しにくいが、今回は県が精緻な調査に努力され、『いじめ』の多い実態が正確かつ具体的によく見えた」と述べたとうかがいました。

 「いじめ」問題では、私も作成に深くかかわった「いじめ防止対策推進法」が今年6月に成立し9月に施行されました。「いじめ」を重大な人権の侵害として認識し、それを社会全体で解決していこうという合意が作られた意味は大きいと思います。和歌山の子どもたちを「いじめ」から守るために、私も皆さんとともに取り組みを進めていきたいと思います。

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