ロシアのウクライナ侵攻を終息させるために ―経済制裁は不退転の決意で

岸本 周平

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1カ月以上が経ちました。実力による現状変更は国際法違反であり、ジェノサイドとも言える民間人への無差別で非人道的な攻撃は決して許されるものではありません。
西側諸国はこれまで一致団結してロシアへの経済制裁を強めてきました。ロシア中央銀行の外貨準備を使えないようにする措置に加え、貿易決済の情報システムSWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの金融機関の排除によってルーブルは暴落し、さらなる制裁を拡大しています。
このまま金融制裁が効果を発揮すると、さらなるルーブルの暴落、資源のない新興国の通貨暴落などによる金融危機のおそれも出てきます。日本の金融機関、特に新興国の債券などを組み込んだ金融商品を保有している地方銀行などの経営に悪影響が出る可能性もあります。
ロシアは天然ガスや原油の輸出国であり、ウクライナも小麦などの輸出国です。すでに、資源や穀物の価格は急騰しており、世界経済に及ぼす影響は多大です。つまり、経済制裁は返り血を浴びてもやり続けなければならないということです。
EUに加盟した旧共産圏諸国が豊かになる中、ソ連邦時代は重工業も盛んで豊かだったウクライナが相対的に貧しくなりました。1980年代にはウクライナの一人当たりGDPは隣国のポーランド、スロバキア、ルーマニアよりも大きかったのに、今では、それぞれが2・5倍以上になっています。ウクライナから多くの国民が隣国に出稼ぎに行くまでになり、EU加盟を熱望するようになりました。そのことが安全保障面におけるNATOの拡大の動きにもつながり、2014年のクリミア併合となり、今回の侵攻につながっています。
ロシア自体の一人当たりGDPも旧共産圏のなかでは、ウクライナ、ベラルーシに続いて下から3番目と低迷しています。世界のGDPに占める割合も2021年には2%を割り込み、今年はルーブルの暴落で1%程度になる見込みです。中長期的にロシアの没落は必至で、世界GDPの17%を占める中国のジュニアパートナーになる運命です。そのような状態での軍事的暴発をどのように終息させていくのか西側諸国の不退転の決意が求められます。

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