「地方創世」のための対策 一極集中から地域の持続性へ

石田 真敏

 最近、地元で「地方創生」の具体的イメージがわかりづらいとの指摘を受けます。政府もようやく本格的に着手する段階で明確ではありませんが、私なりに「地方創生」について述べてみます。

 まず、目的は(Ⅰ)人口減少の是正、(Ⅱ)東京一極集中の是正、(Ⅲ)地域の持続性の実現、の3点だと考えます。

 この目的を達成するため国は、人口減少や東京一極集中の状況および弊害について、国民的認識の共有をはかるため積極的な広報を行うべきです。

 さらに、基本的な考え方として、バラマキや省庁の縦割りでは抜本的な対策にはならないため、持続的な雇用の創出など「地域の持続性」を実現できる対策かどうかを厳密に判断して予算化すべきです。またそのために対策を、直ちに実行できる短期の対策、大規模または抜本的な長期の対策など短・中・長期に分類することが必要です。

 【Ⅰ】人口減少の是正
 (1)少子化対策
 個別施策は今日までに出尽くしており、ブラッシュアップの上で実行の是非を判断する段階です。大別すれば、①結婚・出産の支援(堺屋太一氏は特に20歳代の出産支援を指摘)②育児期間の経済的負担の軽減③仕事と育児の両立支援の3分野です。

 (2)労働人口の減少対策
 ①女性の就労 女性の能力発揮、また家計や老後の年金を考慮すれば女性の就労は必要であり、保育施設や長時間労働の抑制など就労環境を整えるべきです。
 ②高齢者の就労 人生100年時代においては75歳程度まで働けることが、健康面・経済面・生き甲斐などでよりよい効果を期待でき、そのためには社会的合意、雇用の創設、訓練支援などが必要です。
 ③技術革新の活用 ロボット、無人耕作機、全自動運転車、人工知能などにより生産性は飛躍的に向上します。

 【Ⅱ】東京一極集中の是正
 国は、関係機関の地方移転を強力に主導するとともに、Uターンなどの支援や企業への地方移転の呼びかけなど偏在を是正するためのさまざまな措置を講じ、同時に災害に対する脆弱性を解消すべきです。
 また、東京中心の交通網を見直し、地方都市間の交流を活発化すべきです。

 【Ⅲ】地域の持続性のための雇用の場の確保
 ①既存産業(農林水産、建設、地場産業、小売商業など)のブラッシュアップ 従来から地域経済を支えてきた産業の再活性化が必要です。例えば、世界の人口増加や温暖化の影響で食糧問題が起きる可能性が高いことから、日本農業は、安全かつ高品質を売りに、耕作放棄地を利用した大規模化、革新技術による機械化や品種改良、さらに6次産業化の推進により輸出産業に育てるべきです。
 ②中小企業の育成 ドイツでは、州規模の公的機関による財政支援と研究支援により、中小企業を世界的企業に育て地域に産業クラスターを形成しています。これに倣い、全国に数千社あるニッチトップ企業(高いシェアを有する企業)を支援して、世界や全国に展開できる企業に育てるべきです。
 ③「課題解決」産業の創出 日本には、高齢化など他国に先駆けて解決すべき課題があります。そこで、健康寿命の伸長や介護支援のための高齢化対応関連産業、エネルギー不足や燃料価格高騰を解消するための省エネ・新エネルギー産業、さらに水・大気など環境悪化、廃棄物処理に対応する環境関連産業などを戦略的に育成すべきです。
 ④革新技術による新産業創出 再生医療・創薬、人工知能・ロボット、新素材など新技術による新産業の地方拠点化を優先的に図るべきです。
 ⑤観光産業の戦略的開発・整備と外国人訪日の促進 多言語翻訳機による「言葉の壁」の解消、準天頂衛星による精緻な位置情報などで外国人の旅行が全国各地に及ぶことから、外国人訪日2000万人をめざすとともに日本人観光客向けにも、広域的かつ戦略的な観光資源の開発・育成を行うべきです。

 【Ⅳ】地方における情報・通信インフラ整備
 ビッグデータの活用、遠隔医療、ネット売買などを考慮すれば、大都市と同時に遜色のない情報・通信インフラが整備(4G,5G)されることは、必要不可欠です。

 【Ⅴ】地域づくり
 ①人口減少・高齢化に対応するまちづくり
 ○ハードインフラ(住宅・交通など)、ソフトインフラ(医療介護、教育など)の見直し
 ○行政の電子化により、住民サービスの向上、行政のスリム化を実現
 ○スマートシティ化によるエネルギーの効率化
 ②地震・津波、ゲリラ豪雨・洪水、スーパー台風、高潮などの防災対策

 以上、簡単に私なりの「地方創生」を概観しましたが、国・自治体が総力を挙げて上記のような課題に取り組み、所期の目的を達成すべきだと思います。

 ちなみに今回の人事で私は従来と同様、団体総局、国家戦略本部、党税調を中心に活動いたします。

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