経験豊かな現場力の復権 新たな道路特定財源制度を

大江 康弘

 今年に入り、 大きく変化したことは世の中の空気が明るくなったということだ。 政権が変わり国民があらためて経験や実績を土台とし熟練した政治家や政党が政権を担うことへの期待感や信頼感が大きいという証左であろう。

 何よりもそのことは、 まだ補正予算も審議中で1円のお金も執行されていない(この原稿を書いている2月24日現在)にもかかわらず 「アベノミクス」 効果で株価は上がり、 円安が続き長いデフレに苦しめられてきた日本経済に一筋の光明が当てられている。 やはり 「景気は気から」 と言われるがまさにその通りである。 さて、 「失われたこの3年半」 をどう取り戻していくかが今、 政治にそのスピード感が求められている、 しかも東海・東南海・南海の三連動地震問題が言われて久しいが、 ようやく政治が動いた。

 二階俊博会長を中心に勉強会を重ね、 国土を強靭にして災害に強い国をつくるという大きな目標と合わせてデフレで沈む経済からの脱却という一石二鳥の内需喚起策である国土強靭化法案である。

 民主党政権は公共事業が生み出す乗数効果の役割を認めず将来にしっかりと国富となって資産を残すストック効果の高い建設国債と赤字国債の区別もできず、 フローからだけのバラマキ指摘は全く誤った批判であり、 しかも、 どこがバラマキで無駄かという検証もせず、 パブロフの犬ではないが条件反射のごとく、 公共事業といえばバラマキ、 無駄という一つ覚えのように繰り返してきた結果、 先月、 二階会長と現場視察にも行ってきたが昨年(2012年)12月2日に発生した中央高速道路、 笹子トンネルの天井板落下事故を引き起こす原因を作ったと言える。

 すでにわが国は 「荒廃する日本」 を感じさせる時代に入ったことを実感すべきであろう。 かつてアメリカは1970年代公共財の供給を怠り、 パット・チョート氏が指摘した 「荒廃するアメリカ」 は 「資源配分補完機能」 の代わりに 「所得再配分機能」 を中心とした財政支出の結果と言われ、 自動車王国アメリカの崩壊の危機であると喚起、 以後、 社会資本整備特に道路建設の維持、 管理を充実させてきたことが再び強いアメリカを再生させる引き金になったと言われる。

 一方わが国は 「事業仕分け」 の対象となり根拠が不明確なまま維持、 管理予算が大きく削減され続けてきた結果、 何が起こったか、 今、 起こりつつあるかを逃げずに直視すべきである。

 この不幸な5年余りで、 かえすがえす残念なのは道路整備の受益者は道路利用者であることを根拠にした 「道路特定財源制度」 の廃止である。

 成熟社会(大きな右肩上がりの経済成長が望めない社会)にとっての国家の維持は、 できうる限りの受益者負担制度の確立であり、 日本はかつて先見性を持って道路特定財源制度を作り、 自動車社会日本を作り上げてきたが大衆迎合の民主党の主張によって、 残念ながらこの制度を廃止してしまったがあらためて今、 国富を高め、 国を強くしているアメリカの道路財源制度に学び、 もう一度、 新たな 「道路特定財源制度」 を構築しなければ、 この国はますます荒廃へと進んでいくだろう。

 まさに今、政治に求められている 「現場力」 とは 「変える勇気、変える力」 であって数字合わせで帳尻を合わすことではない。

 この現場力こそ経験豊かな政治家、 政党にしかできない荒技である。

関連記事

同じカテゴリのニュース一覧

がんばってます

月別アーカイブ